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小さな不動産会社でもマーケティングに注力した方が良いと思う理由

不動産会社で働くといえば、営業がパッと思い浮かぶところです。

特に私が勤めているような地場不動産会社、中小の不動産会社でマーケティング部門がある会社は少ないでしょう。

大手であれば、マーケティング部門、さらにはDX部門や広報部門があるところがあります。

事実、私も会社に入った時は専属部門はありませんでしたが、実際に専属で人件費を割くほどの価値があると判断し、部署を提案し、作らせてもらいました。

利益改善につながったり、様々な施策を打つことができるようになりましたので、体験談を踏まえながらなぜ多くの不動産会社にマーケティング部門がないのかを考察してみたいと思います。

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そもそも不動産会社のマーケティングとは

そもそも不動産会社のマーケティングとは

まず、不動産会社のマーケティングは何をするのでしょうか?

マーケティングといえば小難しい用語がたくさんあります。

いろんなフレームワークやマーケティング用語などがあります。

私は、目的は利益を出すことと考えています。

利益を単純化して考えると、以下の計算式になります。

利益 = 売上 経費

それぞれ分解すると以下のようになります。

売上について

  • 売買:売却益、仲介手数料
  • 賃貸:賃料、仲介手数料
  • 管理:管理手数料

他にも様々な項目がありますが、この売上を上げるための施策を打つのがマーケティングです。

売上を上げるためには、集客の母数を増やす必要があります。

ただ母数が増えるだけではなく、質も上げていかねばなりません。

この辺りをウンウンと考えていくのが仕事です。

続いて経費です。

実際、様々な費用がありますがここでは広告費を取り上げます。

基本は売上を上げて、経費を下げる利益がでます

どうすれば売上を伸ばせるか?どうすれば広告費を最適化できるか?

ここを突き詰めていく必要があり、その仕事がマーケティング。

一歩踏み込めば、雑費や消耗品費、人件費など、システムを改善することで無駄な費用を減らすことができます。

いわゆるDXでしょうか。

ミッションは、会社の経営数値を改善するための効率化をすることだと、捉えています。

多くの不動産会社にマーケティング部門がない理由

多くの不動産会社にマーケティング部門がない理由

大手を除く不動産会社で、マーケティング担当がいる会社は少ないと思っています。

営業あっての不動産会社です。

なぜマーケティング担当が少ないのか?言い換えるとマーケティングの重要度がそこまで高いと思われていないのはなぜか?

自分なりに考えてみましたところ、以下の2つがあると思っています。

  1. 取引単価が大きい
  2. 集客してくれるサービスがたくさんある

それぞれ解説します。

取引単価が大きい

不動産は一つの取引が決まると利益が大きいです。

物販のように1品数千円、数万円という単価ではなく、大きい取引が決まれば、数百万円、数千万円という世界です。

そのため、決まればOK的な風土もあり、細かい改善をしていこう、という風にはなりにくいのです。

事実、いちいち細かい広告効果を気にするよりガンガン営業する方がいい、と現場でもよく声が上がります。

効果を分析して改善するという習慣がないので、旧来のチラシだったり、看板やDM、ゴルフなど、結局効果あるかどうかわからない、という集客方法に回帰してます。

例を挙げてみます。

実は、あるネット広告が年間を通してみると、最もコストパフォーマンスが良かったが、直近2ヶ月でチラシの問い合わせが増えると、チラシめっちゃ効果あるやん!増やそう!となります。

重要なことは、感覚的に効果があったかどうかを判断することではなく、事実ベースに基づいて、適切な経営判断ができるかどうか、その組織風土を作っていくことだと思います。

良し悪しは置いておいて。

集客してくれるサービスがたくさんある

そして、不動産会社の集客は、至れり尽くせりです。

家を買いたい、という人にはSUUMOやHOMESさんなどのポータルサイトが。

家を売りたい、という人には一括査定サイトが。

以前10社以上使っていましたが、かなり削減しました。

時代とともに効果の質が変わってきていることを現場で感じます。

フランチャイズに加盟されている店舗であれば、 本部が集客を行ないます。

不動産会社は自分で集客せずとも、外部サービスで集客できる仕組みがたくさんあります。

私は、ここに、根本の問題があると思っていまして、それぞれの不動産会社が自前集客をするか否かが今後の広告に対する考え方を左右すると考えています。

それさえ出来れば、脱ポータルサイトができたり、適正な広告運用ができていきます。

その自助努力をする構造になっていない、というのが問題点ではないかと思うわけです。

さらに掘り下げて考えてみたいと思います。

不動産会社を取り巻くサービスの構造

先ほど述べたように、集客してくれるサービスがあるのは悪いことではありません。

私が取り上げたいのは、不動産会社と集客機能の分断です。

まず、不動産会社と集客サービスの関係性を見てみます。

不動産会社と集客機能の関係性

広告費を支払って、集客をしてもらっています。

当たり前じゃないの?と思われるかもしれませんが、不動産のサービスの問題点は、以下のように感じます。

  1. ほとんどパッケージ化されている
  2. サービス担当者に、業界経験やマーケティング知識がない場合がある

それぞれ解説します。

ほとんどパッケージ化されている

よく、不動産会社のホームページが似ていると感じることがあると思います。

あれは、裏側のシステムが同じことが多く、そのフォーマットを利用してホームページが作られているためです。

さらにそのシステムを利用して、物件の登録やチラシの作成、顧客管理を行います。

基本的に多くの会社が導入しており、もちろん便利です。

ただし、これにより、ブランディング・自社ホームページでの集客というところが難しくなります。

そのため、全てをパッケージシステムでまかなうのではなく、切り分けて考えていく必要があると思っています。

そして、導入したは良いものの、運用に乗らないケースも多々あります。

結局現場で使わなかったよね、、ということも起きがちです。

今は月額クラウドシステムが当たり前になっていますが、古い地場企業だと買い切り型のシステムを使っているところもあります。

不動産会社側としても、使い慣れたシステムがあるから、わざわざそれを変える必要はないよね?スイッチコストもすごいし。

うん、面倒くさくなります。

担当者に業界経験者やマーケティング知識がない場合がある

サービスの担当者、その不動産のサービスのプロであっても、私が知る限り、不動産業界経験がある方やマーケティングに詳しい人は多くはないように感じます。

もちろん全員ではありません。

サービスが上手に設計されていても、そもそもそのサービスを社内に導入するかどうかは、こちらの仕事。

社内に提案するのは反対意見も多いので、まあ面倒くさいんです。

なので、担当の方が現場を理解してくれているかは、私としてかなり気になるところです。いわば業界経験です。

加えて、不動産のサービスは反響課金型のものも多いため、反響がなければ課金されない仕組みがあります。

しかしです。その問い合わせの質は問わないという罠があります(課金除外などもできますが)。

課金型でなくても、とにかく不動産は大量のデータを扱うため、切り替えるのは本当に面倒くさいのです。現場もIT好きな人は少ないですし。

そのようなサービスは月数万円とそこまで致命的ではないから、継続してしまうのです。

携帯の固定費が高くても、見直しをしない、みたいなイメージです。

何が言いたいかと言えば、サービスのいうがままに流れると、社内にノウハウがたまらないところが問題と感じます。

どこにインパクトがあるかわからないまま、外部サービスを使い続けて、広告費が垂れ流し状態になってしまいます。

不動産会社におけるマーケティングの意義とは

以上の構造を踏まえて、私が考える理想像はこうです。

不動産会社の広告管理の構造

この企画機能があるかないかで、大きく変わります。

中々集計や分析まで手が回らないのが、不動産の現場です。

多くは、不動産営業を兼務しながら広告を運営することになると思います。

細かく改善する暇もなく、さらに結構な量のポータルサイト、査定サイトを使っていることも多いので、ついつい後回しがちになります。

そこを企画機能という体制を構築することで、大幅に広告費を下げることができました。

何をしたかというと、効果を分析して、効果が出ていない広告を辞め、使っていないオプションをやめただけ。

当たり前のことなのですが、これを徹底して泥臭く、論理的に導き出しました。

数十年続く会社でも、面倒くさいので誰もやりたがらないことです。

歴史が長い会社ほどこの作業はやるべきで、本当に効果があるのかないのか、を知っておくのは大切なことです。

広告を辞めるにも、周りを説得しなければなりませんので、過去10数年分ぐらいのデータを遡っていくことがあります。

書式もバラバラですし、データも不揃いです。

そして、無駄なところをコストカットして、その状態でしばらく様子を見て、効果の上下を見て、また広告を見直す。

自社でもブログやSNS運用を強化し、ポータルサイトに依存しない体制を作っていく。

この面倒くさいことをするのがマーケティングの仕事かなと思うようになりました。

すると、広告費の削減だけではなく、社内で数字で語る文化が生まれたり、色々な影響が生まれてきます。

社内で色々な施策も企画し、ノウハウが溜まっていきます。

すぐに効果は出ませんが、広告機能を外部に丸投げしないというのは大切なことのように思います。

広告は「削ればいいというものではない」「かけるべきところにはかける」これは大前提です。

不動産会社のマーケティング担当がやるべきこと

不動産会社のマーケティング担当がやるべきこと

不動産会社のマーケティング担当は、具体的に何をしていくべきか?

先ほどもチラッと触れましたが、コスト管理をしながらも、集客の比率を自社に寄せていく、ことが大事です。

具体的には、以下の1〜4をぐるぐる回していくことです。

  1. 広告費の管理
  2. 効果の計測
  3. 新規施策の検討
  4. 施策の実施

特別なことはしません。

日々、地道に泥臭くやります。

古い手法かもしれませんが、PDCAサイクルというやつです。

定期的に見直すだけでも、注意が行きますので、数字の把握が出来てきます。

また、これとは別に私がやって良かったこととしては、ストックコンテンツを作ることです。

具体的には、ブログやYoutubeです。

これを積み重ねていくと、長期的に見て、広告費を劇的に下げることができ、また問い合わせの質も上げることができます。

大切なことは「意識」と「積み重ね」だと思っていまして、それが実現できれば、この機能を独立させる必要はないと思いますが、やはり組織としては強くなると思います。

この辺りは、こちらの記事で詳しく述べていますので、ぜひご参考ください。

不動産ブログが集客に有効な理由を解説

まとめ

以上、今回は多くの不動産会社にマーケティング部署がない理由を述べてみました。

構造的な問題も多いと思いますが、不動産会社の視点から見れば、大幅に利益改善できるチャンスがたくさん眠っている、と思います。

また、個人でもマーケティングのスキルというのは、必ず活用できます。

私も少しでも、不動産会社で働く方のために有益な情報をお届けできるよう、引き続き現場で汗をかいて働いていきたいです。

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