宅建の契約書(37条書面)の記載事項は、重要事項説明書と比べると、数が少ないです。
まずは全体像をつかみ、項目を覚えていきましょう。
契約書に記載する項目は、大きく分けて以下の4つに分かれています。
- 絶対に記載しないとダメな項目(売買も賃貸も)
- 絶対に記載しないとダメな項目(売買)※賃貸は不要
- 定めがあれば記載する項目(売買も賃貸も)
- 定めがあれば記載する項目(売買のみ)
用語を覚える必要はありませんが、
といいます。
ここでは、一つずつ具体的に見ていきましょう!
絶対的記載事項(売買・賃貸共に必要)
まずは、絶対に記載しないとダメな項目です。
氏名・住所 宅地又は建物を特定するために必要な表示
これらのような、誰が買うか、どの土地を買うか、という項目がないと契約になりませんよね。
まずは、これらが必要な記載事項です。
代金・交換差金・借賃の額・支払時期・支払方法
お金の話も大切ですね。
物件の引渡し時期
いつ物件を引き渡すのか?といった物件の引渡時期も記載します。
絶対的記載事項(売買のみ必要)
次に、売買のみ必要な項目です。
売買は賃貸と違って金額も大きく、より慎重に契約する必要があります。
そのため、記載事項も賃貸より多くなることを理解しておきましょう。
既存建物であるとき、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項
これは、中古住宅の時に必要な項目です。インスペクション(建物状況調査)のことをいいます。
新築では適用されません。
構造耐力上主要な部分とは?
建築基準法施行令第一条第1項3号
基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他こ れらに類するものをいう。)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。
中古住宅の場合、これらに問題があると自身が来たときに倒壊したり、心配しながら住まなければなりません。
そのため、お互いが重要な部分について確認しましたよ、という項目を入れる必要があるのです。
移転登記の申請時期
賃貸では移転登記の申請などはありませんから、これも売買のみになります。
そして、これらは契約書のみ書けばよく、重要事項説明(35条書面)では不要になっています
ここで、絶対的記載事項をまとめておきます。
絶対的記載事項 | 売買・交換 | 賃借 |
---|---|---|
契約当事者の氏名・住所 | 〇 | 〇 |
宅地建物の表示 | 〇 | 〇 |
代金・交換差金・借賃の額・支払時期・支払方法 | 〇 | 〇 |
引渡しの時期 | 〇 | 〇 |
既存建物の場合、構造上主要な部分等の状況について、当事者双方が確認した事項 | 〇 | × |
移転登記申請の時期 | 〇 | × |
任意的記載事項(売買・賃貸共に必要)
以下は、売買・賃貸共に定めがあれば記載が必要な事項です。
危険負担
天災その他不可抗力による損害の負担は記載しなければなりません。
例えば、地震や火事などで引渡しが困難になった時などの措置です。
私も実務でそのような経験をしたことはありませんが、万が一にそなえるのが契約です。
契約の解除に関する事項
契約の解除に関する事項です。
契約が解除出来る場合があるとすれば、どのようにできるのか?いつまでに契約解除する必要があるのか?
これらを決めていく必要があります。
損害賠償額の予定・違約金
損害賠償額の予定をしたり、違約金を定めている場合はその旨もさだめなければなりません。
そして、これらの中でも危険負担以外は重要事項説明書への記載が必要になります。
任意的記載事項(売買のみ)
最後に、定めがあれば記載する、売買のみの項目を見てみます。
契約不適合担保責任の履行に関する保証保険契約その他の措置
種類・品質に関して契約内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任の内容、保証保険契約等の措置の内容を記載します。
租税その他公課の負担
租税公課とは、国税や地方税などの税金である「租税」と、国や公共団体などに対する交付金や会費などの公的な課金である「公課」のことです。
固定資産税などの負担がある時に記載します。
任意的記載事項をまとめておきます。
任意的記載事項 | 売買・交換 | 賃借 |
---|---|---|
天災その他、危険負担に関しての定めがある場合 | △ | △ |
契約の解除に関する事項 | △ | △ |
代金・交換差金、借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額、授受の時期、目的 | △ | △ |
損害賠償額の予定、または違約金に関する定めがあればその内容 | △ | △ |
ローンのあっせんの定めがあるときは、ローンが成立しない時の措置 | △ | × |
契約不適合責任の定め | △ | × |
保証保険契約等の措置等の定め | △ | × |
租税その他の公課負担に関する定めの内容 | △ | × |
△=任意的記載事項(定めがあれば記載)
重要事項説明書(35条書面)との比較
最後に、重要事項説明書に記載するかどうか、の比較表もまとめます。
これまで説明したものに、35条書面の記載が必要かどうか、まとめたものになりますので、比較してご参考ください。
記載事項 | 売買・交換 | 賃借 | 35条記載 |
---|---|---|---|
契約当事者の氏名・住所 | 〇 | 〇 | 〇 |
宅地建物の表示 | 〇 | 〇 | 〇 |
代金・交換差金・借賃の額・支払時期・支払方法 | 〇 | 〇 | × |
引渡しの時期 | 〇 | 〇 | × |
既存建物の場合、構造上主要な部分等の状況について、当事者双方が確認した事項 | 〇 | × | × |
移転登記申請の時期 | 〇 | × | × |
天災その他、危険負担に関しての定めがある場合 | △ | △ | × |
契約の解除に関する事項 | △ | △ | 〇 |
代金・交換差金、借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額、授受の時期、目的 | △ | △ | 35条には、時期は記載不要 |
損害賠償額の予定、または違約金に関する定めがあればその内容 | △ | △ | 〇 |
ローンのあっせんの定めがあるときは、ローンが成立しない時の措置 | △ | × | 〇 |
契約不適合責任の定め | △ | × | × |
保証保険契約等の措置等の定め | △ | × | 措置を講じるかどうか、講ずる場合は概要を記載(売買のみ) |
租税その他の公課負担に関する定めの内容 | △ | × | × |
△=任意的記載事項(定めがあれば記載)