農産物直売所というと、JAや道の駅など郊外にあるイメージをお持ちの方も多いと思います。
その中でも、京都・奈良最大級の農産物直売所「旬の駅」さんは、民間企業として8年間で急成長を遂げ、新規出店を積極的に行われています。
今回は、旬の駅の運営会社である、株式会社フォレストファームの佐藤社長と取締役の神田様に、その成長の秘密を思う存分インタビューをさせていただきました。
不動産を借りて事業を行おうとされている方、そして不動産を貸したい方、集客力のあるテナントを募集されている方にとっても、有益な情報になる内容かと思いますので、是非ご覧くださいませ!
本日はよろしくお願いします!
よろしくお願いします!
株式会社フォレストファーム 代表取締役社長 佐藤 義貴
1980年生まれ。京都府舞鶴市出身。4人兄弟の末っ子。大阪府最大手の会計事務所兼コンサルティング会社で累計100件以上の会計財務経営コンサルティングに従事。その後、約10年、栽培面積40ha以上の農業法人で栽培現場・経営に携わる。
よろしくお願いします!
株式会社フォレストファーム 取締役 神田 和樹
1983年生まれ。滋賀県守山市出身。佐藤氏の同会計事務所で勤務し、大手保険会社でアライアンス及びセールスに従事。その後、農産物直売所「旬の駅」の立ち上げから携わり、年商25億円規模まで成長させる。
目次
旬の駅とは?
まずは、旬の駅のことについて教えてください。
旬の駅は、農産物直売所です。
農産物直売所は大きく分けると3つあり、道の駅・JA・そして私たちが運営する民間企業です。
農産物直売所は、農家さんが直接野菜や果物などを旬の駅を通じて消費者に届けられるように、売り場に値札などをつけて売ることが出来ます。
旬の駅では売り場を提供することで、農家さんが自由に販売し、また消費者の方が高品質でお得に購入できる仕組みを整えています。
旬の駅は、年間合計で120万人を超える方に来店をいただいており、奈良県のならやま店、京都の京都店、大阪のイオン鴻池店と3店舗の合計年商は25億円程度になります。2021年11月からは新たに奈良県郡山市でも大型店舗の新規出店が決まっています。
JAや道の駅と旬の駅さんとの違いはどんなところにあるのでしょう?
一番大きな違いは、しがらみがあるかどうかです。
JAや道の駅さんだと、その地域の農産物しか扱えないことも多いですが、私たちは民間である強みを生かして、全国各地の本当に良いものにこだわって売り場づくりを行っています。
もちろん、ほとんどは京都や奈良などの農家さんが作った農産物ですが、私たちのチームにいる、野菜マイスター兼専任バイヤーが、全国のこだわり農産物を仕入れて売り場づくりを行っています。山形のモモや、鳥取の新甘泉という梨、など美味しいですよ!
1月で700万円の売上を上げるこだわり野菜コーナーもあります。
旬の駅の立ち上げは、マイナスからのスタート
事業も大変好調に見えますが、旬の駅を立ち上げた当初のお話もぜひ聞かせてください。
旬の駅の1号店である、ならやま店がオープンしたのは、2013年6月29日です。今からちょうど8年前ですね。
旬の駅を始めたきっかけは、立ち上げメンバーの中に土地を持っている役員がいて、その土地を使って事業をしよう、となったことがきっかけです。
結果的にその土地ではなく、別の物件で始めることになったのですが(笑)。
オープン当時、仕入先の農家さんは70名ほどで、オープン当初は、1日の売上も30万円足らず。来店数も250人ほどでした。最初からいきなり大赤字になってしまい、当時はレジのお金も給料に回したりしていましたね。
誰もお客さんがいない時間もありましたからね。そんなスーパー見たことないでしょ?(笑)
私は、別で長崎の五島列島で農業法人も同時期に立ち上げていたので、その立ち上げにも苦戦していました。さらにそのタイミングでギックリ腰に。色々大変で、立ち上げ時はダンボールを敷いて寝泊りもしていましたね。
冬の奈良は寒かったのですが、ダンボールは意外とあったかいんですよ。笑
今の状況からは考えられないですね・・・どのようにして立ち上がられたのですか?
いよいよ、そのような状況の中で、4ヶ月目に資金繰りがいよいよやばいという状況に。なんとか日本政策金融公庫からの借り入れに成功し、危機を乗り越えましたが、同時に根本的に経営体制を見直しました。
原因は、仕入れの弱さとはっきりしていたので、それを解消するための方法を考え抜きました。
当時、農産物直売所は、農家さんが早朝に売りたい農産物を持ってきて、店頭に並べるスタイルだったのですが、私たちは、自ら取りに行こう!と考えて、集荷部を立ち上げました。
奈良の南部や明日香村に、ボンゴ(車)で集荷しに行き、仕入れの強化に走りました。
コスト面からしても採算が取れないので、このような取り組みを行っている直売所は当時はありませんでした。
この集荷部を内製化しているのは、旬の駅ならではの強みでもあります。
すると、農産物が増え、お客さんが増え、農家さんも増え、その良いスパイラルが続きました。
結果として、初年度の売り上げは3億円、2年目は6億円、3年目は3倍と順々に増えていき、その流れでイオン鴻池店をオープンさせる流れになりました。
2店舗目のイオン鴻池店
そこから2店舗目はイオン鴻池店に出店されたのですね。
イオン鴻池店は、2017年4月5日にオープンしました。
出店前にも2、3回催事をしたことがあり、業績も良かったので出店を決めました。
場所もならやま店よりも都会で、立地もイオンの中。周辺には直売所も少なくよく売れるだろうという仮説のもと売り場の準備を進めていましたが、この仮説は見事に外れることになりました。
例えば、ならやま店は、奈良の中枢駅からも離れていて、車で来られる方が多いです。
白菜の一玉をたくさん買ったり30kgのお米を買って帰られる方が多いのは普通でした。
しかし、イオン鴻池店では、自転車で来られる方が多く、日常使いの農産物を買う方が多かったのです。
大型店とモールの中の店舗では戦略を変えなくてはならない、と改めて痛感しました。
また、実は今のイオン鴻池店は、店長もスタッフも全員がパートさんなのですが、立ち上げ当時は社員が3人常駐という形をとっていました。経費もふくらみ、結果として3年間赤字続きでした。
ならやま店の成功パターンを色々と当てはめようとしましたが、やはり立地によってやり方を変えていかなくてはならないと学びました。
改善を重ね、今ではイオン鴻池店も順調に成長しています。
3店舗目、京都店の奇跡
そこから3店舗目は京都店をオープンされましたね。京都店の立ち上げはどのような形でしたか?
京都八幡店は、2019年の6月21日にオープンしました。
元々2019年の4月にオープンを予定していたのですが、京都店も一筋縄ではいかなかったんです。
元々は漫画喫茶だった場所で、そこを改装する計画で建築を進めていたのですが、しかし、オープン間近に、用途変更の申請ができていなかったことが分かり、オープンが数ヶ月伸びてしまいました。
今では不動産のこともだいぶ分かるようになってきましたが、当時は知識もなかったので、いい勉強になりました。
そんなこんなで無事オープン出来てからは、オープンすると、京都店はこれまでの店舗とは違い、順調な滑り出しでした。
初日で3000人の来店、900万円の売り上げを叩き出し、これはいける!と誰もが思っていました。
しかし、最初の月に1日1000人だった来店者は、2月目には900人。3月目には800人と、月を追うごとに減って行きました。
今まで悪い状態から良くなることは経験しましたが、良い状態から悪くなることは経験がありませんでした。
京都店は地域柄もあり、他店舗と比べて、農家さんが値段を高値でつける状況にありました。
お客さんは、安くて良いものを探しに来るのに、値段がそれなりになってしまうと、どうしても足が遠のいてしまいます。
このままだとマズい、という状況の中、2021年2月コロナウイルスの感染拡大に突入しました。
ちょうどその時期だったのですね・・・
はい。ただ、実は私たちにとってはコロナ禍は非常に追い風がふき、これまでにない売上の伸びにつながりました。
非接触で野菜を受け取ることができる「野菜のドライブスルー」という企画を京都店で行い、メディアにも大きく取り上げられました。
加えて、価格の見直しにも着手し、ここで綺麗なV字回復を果たし、現在も順調に成長を遂げています。
旬の駅のすごい出店戦略
さらには、今年の11月から奈良県大和郡山市のトドロキタウンで大型店舗の出店も決定されています。
出店はどのような目線で決められていますか?
2つあります。
1つめは大型店舗。基準は、駐車場150台以上・1,000㎡以上の物件を基準に探しています。そうなると場所も限られてきて、パチンコやネットカフェの跡地、ドラッグストアの跡地が多くなりますね。
旬の駅には年間50万人を呼べる集客力があります。この数字は購入客数なので、同行者を含めると、さらに多くの100万人を超えるお客様にお越しいただいているかもしれません。
トドロキタウンも3階部分がボウリング場になっているので、私たちが出店することで、館全体の集客にも貢献できる自負があります。
また、私たちが大型店舗を出店する際にはホワイトスペースという考え方を大切にしています。
例えば、農家さんがたくさんいるところに出店すると、供給が多くなりすぎます。逆に、購買者が集中しているところだと、需要が多くなりすぎます。
奈良も京都も、近隣地が栄えていて、生産農家さんがたくさんいるちょうど間の場所です。
我々は、その中間のバランスの地域をホワイトスペースと捉えて、出店を決めています。
2つめはモールやアンテナショップ型の小型店舗。先ほどとは戦略が異なります。
大手デベロッパーの方からお話をもらうこともありますが、まさにイオンのようなモールの生鮮スーパー売場の目の前の小スペース、百貨店の地下スペース、さらには都会のビルの路面スペースなど。
今はありませんが、都会にアンテナショップがあっても面白いかなと思います。
大型店舗だけではなく、アンテナショップも考えておられるのですね!
確かに都会に地域の名産物を集めたショップも増えています。
そうですね。
それに加えて、私たちが他と違う強みがもう一つあると思っています。
それは、地域で経済活動を循環させていることです。
通常のメーカーであれば、地元に工場があっても部品を中国で製造して輸入する会社も多いと思いますが、私たちは生産も仕入れも販売も雇用も地元で完結する仕組みづくりができます。
これは、そのビル自体の集客にも貢献が出来ますし、地域貢献がしたいという不動産オーナーさんにとっても、地域に喜ばれるはずです。
私たちができる貢献度が高いと考えています。
旬の駅の圧倒的な強み
今はオイシックスさんや食べチョクさんなど、ネットで直接購入できるサービスもどんどん出てきていますが、今後この業界で生き残るにはどのようなことが求められますか?
私たちの強みは先ほどの集客力もそうですが、圧倒的な鮮度を保った農産物を提供できることです。
この鮮度を保った状態で顧客満足を追求できるかが、当社の存続の分かれ目と考えています。
実は、今年の8月から新しい取り組みを始めました。
バーコードに野菜が入荷した日を記載する取り組みです。
もともと集荷を自社で行なっているという強みに加え、徹底して新鮮な農産物をお客様に提供していこうという取り組みです。
この業界では、基本的に先入れ先出し(入荷日が早いものは、ロスにならないように先に出すこと)のため、かなり前衛的な取り組みかと思います。
本当にお客さんのためになることと、自社の方向性を決めた結果、この取り組みをやってみよう!という動きになりました。
これは他社さんには真似できない強みだと思います。
あと、これからはお客さんの来店頻度や購入頻度をアプリで可視化する取り組みを始めます。実は・・・
それについては私から話します!
絶対に聞いて欲しい話があります。
ぜひ教えてください!(笑)
私は長崎と大阪をよく行き来しますが、飛行機は絶対にANA(全日空)さんと決めています。
ANAは乗る回数などで、ブロンズ・プラチナ・ダイヤモンドとステイタスが分かれます。これによって、乗る側も、優待を受けられるので、どうせ乗るんだったらANAを選ぼうと思うわけです。
みんなが待っている中、優先的なサービスを受けられるので、優越感があるんですよね。
(飛行機の自慢話・・・?)
その優越感っていうのはいやらしいものではないですよ(笑)
自分、頑張ったな〜という満足感に対するものでしょうか。
小売店も同じで、ポイントカードはあっても、買う回数などでクラスが変わったり、優待を受けられることはありません。
私は、このような仕組みを作りたいと考えています。
どんどんファンを増やして、どうせ行くなら旬の駅!と言ってもらえるように、購入・来店頻度ごとに特別な商品や優待を用意する予定です。
そのためのアプリやIT環境も整備しています。
日本一の農産物直売所を目指して
ここまで旬の駅さんの強みや戦略を伺ってきました。
今後、どのようなところを目指されているのでしょうか?
私たちの目標は、日本一の農産物直売所づくりです。
具体的には、2030年に30店舗年商200億円を目指しています。
そのために、何をしなければならないのか?をノートに落とし込み、一つずつ実行していっている段階です。
これまでの立ち上げもそうですが、60%が良ければ、とりあえず走りながら実行していくことが大切だと思っています。行動しなければ何も始まりませんからね。
日本一の直売所、楽しみですね!
まだまだお伺いしたいことがたくさんありますが、改めてまたお話しさせてください。
今日は楽しいお時間をありがとうございました!
まだ5%ぐらいしか話しきれてません(笑)
ありがとうございました!
ありがとうございました!
ちなみに、今旬の駅のECサイトを立ち上げる予定なので、責任者も探しています!良い方がいれば是非(笑)
やることは盛りだくさんなので、これからも攻め続けます!
編集後記
今回は、農産物直売所のプロフェッショナル、佐藤社長と神田様にお話を伺いました。
事業の性質上、大型店舗やモールとの不動産契約、また建築確認時の申請など、不動産に接する機会も多いため、その知識も兼ね備えていなければ、事業に大きなリスクを伴うこともおっしゃっていました。
まさにローマは1日にしてならず。
出店戦略も大いに勉強になりました。
このお話を伺ったのは3時間、あっという間のお時間でした。
佐藤社長はまだ全体の5%も話していないとおっしゃっていましたので、また機を改めてお話を伺いたいです。
改めて、快くインタビューに応じてくださった、佐藤社長・神田様に心より感謝いたします。
ありがとうございました!
旬の駅さまへテナントを貸したい方、ご提案をご希望の方は、お問い合わせは以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。
※インタビューは2021年9月当時のものになります。
取材をご希望の方は、不動産のOTOMO編集部が直接あなたのオフィスまで伺います!
不動産のOTOMOへ掲載希望の方は一度お気軽にお問い合わせください♪
以下より取材希望の旨を書いてお問い合わせください♪