買付証明書、キャンセルできますか?
結論キャンセルは可能です。
買付証明書とは、いわば不動産の申込書になります。
買付証明書は、不動産を購入する意思を売主さんに伝えるもの。
自身の氏名や住所、家族構成や資金計画などを記入します。
私は業者売主の立場と、仲介の立場、どちらも経験したことがあります。
やはり、キャンセルも幾度となく経験していますので、今回はそのお話をしたいと思います。
買付証明書のキャンセルは早めにするのが鉄則
まず、最初にキャンセルは一刻も早くが鉄則です。
方法は、相手にその意思を伝えるだけです。
加えて、契約締結後になると、キャンセルは違約金等が発生します!
買付証明書は、契約を前提にしているものの、契約を締結しているとはいえません。
過去の裁判例では、正式な契約を締結することを前提としていても、それ自体が契約の成立を証明する書面ではない、とされています。
宅地を造成して販売するための用地買収の交渉段階で、買主業者が売主業者に対し「買付証明書」を提出し、他方、売主も買主に対し「売渡承諾書」を交付しても、未だ当事者間に正式の売買契約が成立したとはいえない。奈良県地裁葛城支部(昭60・12・26)
RETIO判例より
買付証明書の意義とは?そもそも何か
ここで少し買付証明書の意義を考えてみましょう。
まず、先程の繰り返しですが、買付証明書は申込の意思を伝えるものです。
ここは不動産会社の営業によって、スタンスが異なる場合があります。
とりあえず買い付けを書いてください、という人もいれば、お客さんが申し込みたい、となって初めて買い付け証明書を出すケース。
人によっては急かされるように思われる方もいらっしゃいます。
そもそもなぜ買付証明書が必要なのか?
それは、自身が一番手として交渉を進めるために必要です。
ここは正直買主さんから見たら「この不動産営業マンが言ってることは本当かな?」と思う気持ちも分かります。
ただ、営業としては「お客さんが本当に欲しいのならば、早く決断することもときには必要」と思うものです。
私も過去、お客さんに判断を任せている間に、他の方から買付証明書が入り、結局その人で決まったケースがあります。
そのお客さんには「そういう仕組みだったら早く言ってよ!買付証明書書いたのに!」と怒られたことがあります。
懐かしい思い出です。
営業マンとして、お客さんの気持ちを読み取って、正確に判断するサポートをするべきなのですが、やはり時には、すれ違いというのはどうしても起きてしまいます。
営業にも色々なスタイルはありますが、共通しているのは不動産を買いたいというお客様のサポートをしたいと思う気持ち。
その気持ちが無ければ、そもそも営業をするべきではありません。
中には一部悪徳営業というのも聞きますが、そのように残念なケースは別として、営業としては「買付証明書がないと売主さんに話を持っていけない」という事実もあります。
実際にあった買付証明キャンセルの例
買付証明書を出す段階では、例えば
2,050万円の家を2,000万円にまけて欲しい
といった交渉にも使われます。購入希望金額という欄があるので、そこに2,000万円と記載をするのです。
仮にその金額が通らなければ、断りやすいでしょう。
もし仮に2,000万円で売っていいですよ、と売主さんが回答した場合、やっぱり辞めます、というのは心象はあまりよくありません。
しかし、不動産はとても高価な買い物で、数千円や数万円などといったレベルではありません。
そのため、言いにくいといったことはもちろんありますが、不動産を買うのをやめる、といった判断をする時は、一刻も早く相手に伝える必要があるのです。
私が経験した中でも以下のキャンセル例がありました。
・急に事情が変わった
・資金不足になった
・よく考え直したけれど、耐震が心配なので辞めたい
・交渉金額に達しなかったので辞めたい
・時間を変えて見にいったら、思ったより騒音がしたので辞めたい
などなど
買付証明のキャンセルするとどうなるのか
基本的に、契約締結前や手付金の払い込みを行う前には、違約金等が発生することはありません。
まれにコンサルティングフィーなどといった費用が発生する場合もあると聞いたことがありますので、買付証明書を書く際には、キャンセルしても違約金はかかりませんか?と確認しておいた方が良いかと思います。
ただし、キャンセルは前向きな話ではありませんので、以下のような気持ちになります。
売主の時は相手の方からキャンセルをしたい、という旨を了承することで終わります。
仲介の時には、買主さんがキャンセルしたいという旨を、売主さんにお伝えをする必要があります。
もちろん、逆に売主さんの方から断られる、というケースもごく稀にですがあります。
私も過去経験した話ですが、買付証明書を出した直後に、売主さんが売るのを辞めたい、といったケースもありました。
まとめ
キャンセルは、色々な関係者を巻き込むことになりますし気が重いものです。しかし、一番は当事者の責任です。
言われるがままに買付証明書を書いてみましょう、と勧められることもあるかもしれません。
その時はじっくり考えて、本当に欲しいのか?などを考えていく必要があります。
不動産屋としても、お客さんを焦らせるようなことはあまり望ましくありません。
できる限り日頃から信頼関係を築いておきたいですね。
かといって、他の人から買付証明書が入るケースもありますので、難しいところもあるかとは思います。
うん、こればっかりは難しいところなのです。
そうは言っても凹みます。笑
楽しいこともあれば、キツいこともあるのが仕事ですね。