不動産特定共同事業法って、最近よく聞くけど結局どういうこと?
不動産特定共同事業法は、略して「不特法(ふとくほう)」と呼ばれており、「FTK法」とも略されます。
制度が複雑なので、実態を掴むのになかなか苦労する分野かと思います。
今回は国土交通省の各発表資料をもとに、わかりやすく解説していきたいと思います。
以下のような方はぜひご参考にしていただけると嬉しいです!
- 不動産特定共同事業が今流行ってるみたいだけど、よく理解できていない
- 不動産特定共同事業法の具体例を知りたい
- 不動産投資やクラウドファンディングをしてみたい
目次
不動産特定共同事業(FTK)法をわかりやすく
そもそも不動産特定共同事業(FTK)とは何でしょうか?
ざっくりまとめると、
事業です。
具体例を挙げます。
2021年の年末には、ミサワホーム不動産が「ミサワスマートファンド日暮里」というFTK法に基づく不動産小口化商品の展開を始めました。
本来、不動産投資を始めるには1棟のマンションを買うためには多額の資金や、家賃管理・修繕計画など大きな労力が必要になります。
小口化することで1口100万円単位になり、少額な資金で不動産を取得することができる商品となるのですね。
これにより、事業者にとっては資金調達がしやすくなるメリットが生まれ、投資家も小口で不動産投資をすることが可能となります。
そして、FTK法は、この事業を行うために定められた法律です。
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不動産特定共同事業法の成り立ちについて
次に、FTK法の成り立ちを見てみましょう。
法律の第一条を、まずみてみます。
第一条
この法律は、不動産特定共同事業を営む者について許可等の制度を実施して、その業務の遂行に当たっての責務等を明らかにし、及び事業参加者が受けることのある損害を防止するため必要な措置を講ずることにより、その業務の適正な運営を確保し、もって事業参加者の利益の保護を図るとともに、不動産特定共同事業の健全な発達に寄与することを目的とする。
不動産特定共同事業法 第一条
はい、よくわかりませんね笑
まとめると、この法律の目的は以下の2点。
- 不動産特定共同事業の健全な発展
- 投資家の保護
事業の健全な発展させて、投資家も守りましょう、ということですね。
そもそも何でこんな法律ができたの?
これには、バブル時代の影響が背景にあります。
1980年代には、バブルの影響で地価が高騰し、節税対策として不動産を小口化した商品が現れました。
しかし、経営基盤が脆弱な不動産会社がこのような事業を行なっていたことで、倒産があいつぎました。
投資家への情報開示が不十分だったこともあり、投資家は大きな被害を被ってしまいました。
そのままだと、事業は健全に発展していきませんし、投資家の利益にもつながりません。そこで、1995年に施行された法律が不動産特定共同事業法なる「不特法(FTK法)」です。
この法律により、FTKを運営するためには、国道交通大臣、または都道府県知事の許可が必要になりました。
不動産特定共同事業者の企業例と種類
そんなFTKですが、国交省のデータによると、合計事業者数は205事業者になっています(令和4年1月末時点)。
全国の不動産会社の数から見ても、ほんのごく一部であり、かつアセットが豊富な会社が許可を得ている傾向があります。
不動産特定共同事業者は、第1号事業と、特例事業に分かれています。それぞれの図を見てみましょう。
後ほど具体例をあげますので、今はこんな感じなんだな〜程度で大丈夫です。
第1号事業
第1号事業には、第1号事業者、第2号事業者が該当します。
特例事業
特例事業には、第3号事業者、第4号事業者が該当します。
不動産特定共同事業法の種類と企業の具体例
先ほど見たように、事業内容によって1号〜4号まで分かれています。
具体的にどのような会社が許可を得ているかをあげた方がイメージしやすいです。
内容と実際に許可を得ている企業を以下挙げてみます。
不動産特定共同事業者
種類 | 資本金 | 企業例 | 事業内容 |
---|---|---|---|
第1号事業者 | 1億円 | 三井不動産・住友不動産・東急不動産・三菱地所など | 契約を締結して、契約に基づいて運営、収益を分配する |
第2号事業者 | 1,000万円 | オリックス・森ビル・三井物産・みんなで大家さん販売など | 契約の締結を、代理か媒介する |
第3号事業者 | 5,000万円 | 東京建物不動産販売株式会社など | 契約に基づいて委託運営し、不動産取引業務を行う |
第4号事業者 | 1,000万円 | SPCアセットマネジメント株式会社、いちご投資顧問株式会社 | 契約の締結を、特例事業者に代わって行う事業者 |
なお、三井不動産株式会社は、1号〜4号取得、東京建物不動産販売株式会社は第2号〜第4号というように複数許可を得ている会社も多いです。
それぞれ必要な資本金も定められていることがお分かりいただけると思います。また、資本金を満たす以外にも、以下の4つを満たしている必要があります。
- 宅地建物取引業者免許を受けていること
- FTKを営むための必要な財産的基礎があり、かつ適格に事業を遂行できる人的構成があること
- 基準を満たすFTK契約約款があること(一般投資家を対象とする場合のみ)
- 事務所ごとに業務管理者を配置していること
特に、業務管理者については、以下の要件が定められており、厳しい要件が定められています。
- 不特事業3年以上
- 実務講習
- 登録証明事業(不動産証券化マスター、ビル経営管理士、不動産コンサルティングマスター)
それぞれの試験は、宅建と比べると遥かに難易度も高く、コンサルティングマスターは、宅建や一級建築士、不動産鑑定士に登録して、さらに5年実務経験を積まないと取得できません。
なるほど、厳しい要件が必要なんですね。ちなみに、「小規模」不動産特定共同事業者というのもよく聞くのですが・・・これはまた別ですか?
小規模不動産特定共同事業法について
小規模FTK法は、平成29年法改正によって創設された制度です。
小規模第1号事業者、小規模第2号事業者、と分かれます。
それぞれの資本金が1,000万円と緩和されています。
また、登録制(5年)となったことで、地方の中小規模の事業者の参入が緩和されました。
許可制・登録制の違いがあることを理解しておきましょう。
後ほど詳しく説明します。
不動産クラウドファンディングも、この法律に基づいています。
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不動産特定共同事業法の法改正とトピックス
さて、FTK法は、1994年(平成6年)に制定されて以降、これまで度重なる法改正が行われてきました。
その中でも、特に押さえておきたいトピックスを、解説していきます。
2013年(平成25年)不特法改正 特例事業を導入
当時の改正では、SPC(特別目的会社)を用いた特例事業が規定されました。
つまり、このSPCでFTKができるようになった、という改正です。
この改正は、どのようなインパクトがあったのでしょうか?
先程説明したように、FTKの許可要件には宅地建物取引業免許が必要でした。
この規制を緩和して、SPCとして事業を行うことができるようになる。
つまり、SPCがFTKの許可を持つ会社に業務を委託することができるようになった、ということです。
先程の図をもう一度出しておきます。
このような形を「倒産隔離型」といい、その形の事業を「特例事業」と呼ぶのですね。
ただ、これらは要件を満たせば、届出制でよくなったものの、制度や税制面において中々普及が進まなかったといわれています。
直近6年間の活用実績は、94社、3,251億円となっています(H26年度〜R1年度)。
2017年(平成29年) 小規模不動産特定共同事業の創設
平成25年の法改正も画期的でしたが、まだまだ課題は残ります。
そこで!
更なるFTKの活性化を図るために、平成29年にも法改正が行われました。
いわゆる小規模不動産特定共同事業が創設されたのです。
先ほど触れた部分ですね。
大きなポイントは以下の2つです。
- 中小企業の特例事業への参入が可能に!
- 電子化やクラウドファンディングへの対応環境整備!
小規模FTKが創設されたことにより、資本金や出資金などの要件が緩和されたり、登録更新制度(5年)になったりと、中小規模の事業者でも参入できるようになりました。
都心部の巨大企業だけではなく、地方の不動産業者が参入することで、空き家や空き店舗などの活用を含めた、地方創生プロジェクトも増えることが期待された法改正でした。
2019年(平成31年) 不動産クラウドファンディングを促進するための改正・施策
2017年の法改正により活用が促進されましたが、2019年にも法改正がありました。
不動産クラウドファンディングをより活性化させるための法改正です。
中でも特徴的なものは電子取引業務ガイドラインが策定されたこと。
WEB上で取引を行うのなら、体制をきちんとしてくださいね、というもので、投資家が安心して出資できるように、クーリングオフ制度や重要事項閲覧などがより一層明確化されました。
実際の活用事例としては、奈良県飛鳥村の古民家を宿泊施設として改装して運営した事例や、船屋を影・宿に改装して運営した事例などもあるようです。
空き家や古民家の活用、有休不動産の活用にも生かされる、というわけですね。
この辺りは、不動産業界の課題でもあるところです。
今後の不動産業界の課題については、こちらの記事でも解説していますので、チェックしてみてください。
【業界の今後】国交省不動産業ビジョン2030をわかりやすく解説
不動産特定共同事業法に基づいた不動産クラウドファンディングとは
以上、FTKにおける法改正のポイントやトピックスを見てきました。
最後に、これまで何度か出てきたクラウドファンディングについて紹介します。
不動産クラウドファンディングにおいては、FTK法に基づいて運用されるFTKに、WEB上で出資できます。
最近では、様々なサービスが出てきていますので興味のある方は調べてみてください。
数万円、数十万円といった小資本でも不動産投資を始めることができるので、多額のキャッシュで不動産を購入する前の勉強にもなるかもしれません。
まとめ
以上、不動産特定共同事業法をご紹介しました。
この分野は、法改正も頻繁にありそうな予感もしていますし、まだまだ伸び盛りの分野です。
是非、トレンドをキャッチしてリスクのない不動産投資、事業運営に繋げていきたいですね。
ご参考になれば幸いです。