こんにちは、不動産のOTOMOMです。
上場企業であるAPAMAN株式会社が非公開化をすることでDXの意思決定の迅速化を狙うニュースが発表されました。
アパマンショップといえばフランチャイズのイメージが強いですが、DXについても積極的に投資を行っています。
ここでは私自身の勉強も兼ねて、アパマンさんの成り立ちについてざっくり調べてみました。
APAMAN株式会社について
同社は1999年に株式会社アパマンショップネットワークとして設立されたのちに、2006年7月に持ち株会社体制に移行するとともに、株式会社アパマンショップホールディングスに商号変更。2018年1月に現商号であるAPAMAN株式会社となりました。
以下、沿革を有価証券報告書より引用します。
沿革
1998年10月 大村浩次と大手賃貸管理業経営者数人が不動産賃貸仲介業界の質的向上やIT化を目指して、統一のブランドのもとに全国の不動産賃貸店舗をフランチャイズチェーン化するために、月一度テーマを決め、研究に取り組む
1999年10月 ㈱アパマンショップネットワークを資本金58百万円で東京都新宿区に設立 福岡市博多区に福岡支店開設
1999年12月 「マップシステム」、「ウェブ日報分析システム」を開発
すでに1999年には「マップシステム」、「ウェブ日報分析システム」を開発されていました。今から25年前にすでにIT化を目指す、という文言があることに驚きです。
WEBサイトの社長メッセージでも以下のような記載があります。
弊社は1999年 “ITを活用して不動産業界の質的向上に貢献したい” という思いから設立されました。ステークホルダーは、弊社を不動産会社と認識しておりましたが、創業時はWEBやクラウド等のテクノロジーを提供する企業でした。現在は事業領域を拡大し、「Platform」「Technology」の事業を展開しております。
グループは、APAMAN株式会社と連結子会社27社及び関連会社2社(持分法適用会社)により構成されており、主にPlatgorm事業とTechnology事業の2つを主軸(その他事業もあり)としています。
- Platform事業:賃貸斡旋、賃貸管理、社宅及びこれらに関連するサービス提供
- Technology事業:FC加盟店に対するクラウドシステムやITサービス等のシステム提供
2023年9月期の決算説明書では、通期で457億円の売り上げ、110億円の粗利益(対売上24%)、20億円の営業利益(対売上4.5%)となっています。
収益構造は、23年9月末時点では粗利益の約7割がストック収入です。
APAMAN株式会社のDXとは?
2023年9月期第一四半期の決算補足説明資料によると不動産×Technologyをビジョンとして、以下の2つが大きな重要施策であると述べられています。
- APAMAN DXの推進
- 収益と規模の拡大(社宅・管理戸数)
APAMAN DXのサービス例が資料に挙げられていましたので、以下表にまとめました。
▽資料 P24
サービス名 | 説明 |
---|---|
AOS | 物件掲載から接客まで1台でこなすことが出来る賃貸斡旋システム |
apamanshop.com | 日本最大級のお部屋探しサイト |
BIG DATA | ビッグデータを活用した情報分析サービス |
APS | 年間2,000億円以上の決済を実現する賃貸管理システム |
SKIPS | 顧客・賃貸斡旋会社・賃貸管理会社の生産性を高める統合システム |
室内チェッククラウド | 物件の損傷箇所を撮影することで退去時の公正な清算を実現 |
▽資料 P25
サービス名 | 説明 |
---|---|
来店クラウド | 来店時の個人情報をお客様のスマホで登録することで他の基幹システムへ自動連携します。 |
紹介クラウド | 取引先等の顧客紹介を一元管理するシステムです。 |
RPA | マーケットの最新情報をデジタルレイバーが代行します。最新情報は基幹システムで日々更新されています。 |
APSS | デベロッパーやハウスメーカーなど約350社と連携。20万件の空室物件を日々自動取得します。 |
アマレンネット | 全国のフランチャイジー企業やエージェント等の情報を共有するシステムです。 |
OEM API連携 | 基幹システムのデータベースを各フランチャイジーのホームページと連携するシステムです。 |
SKIPS BB | 日本最大級の業者間流通サイト!管理会社と賃貸斡旋会社の情報を繋ぎます。 |
オーナーWEB | 日本最大級の不動産所有者獲得サイトです。 |
修繕チェッククラウド | 工事業者がスマホで状況報告、データ保管も可能、報告書は自動作成します。 |
巡回クラウド | 建物の巡回やオーナー様への訪問の社内報告をスマートフォンを利用して行うサービスです。報告書作成業務も社外からも行えます。 |
査定クラウド | ビッグデータを活用し、即時に適正な賃料を査定することが可能。住宅賃料査定報告書も自動作成できます。 |
オーナーポータル | オーナー様ご自身がWEBで収支明細を確認するシステム。管理会社はチャットでオーナーと連絡を取り合うことが出来ます。 |
Selkeyクラウド | 賃貸管理・賃貸管理の鍵の開閉を自動化するシステムです。鍵の貸借がいらなくなり、生産性が大幅に上昇します。 |
その他、アプリ作成クラウド、求人サイト、FCポータル、Eラーニングなども提供しています。
今回のMBOの背景
2024年8月2日に公開されたIR資料によると、冒頭のMBOの背景は以下のように述べられています。
一方、当社グループの属する賃貸不動産業界は、参入障壁が比較的低く、企業間の競争が激しさを増していることに加え、国内不動産市況は近年新型コロナウイルス感染症による価値観や社会構造の変化、少子高齢化・国内総人口の減少に伴う賃貸物件の需給構造の変化、為替相場の変動やマイナス金利の解除及び金利引上げといった先行きの不透明感が強まっているものと認識しております。
また、国内外問わず従来の不動産サービスに対するAI実装等のDX(注1)化が急速に進展し、かかる変化への対応が喫緊の課題となる等、当社グループを取り巻く経営環境は大きな変化に直面しております。
出典:IR資料より一部引用(P15)
当社の今後の収益性・成長性維持及び拡大の実現のためには、独立系の立場を維持しつつ、当社グループにおける事業ポートフォリオを見直し、事業の選択と集中によって「アパマンショップ」のFC運営等の事業に対してこれまで以上に機動的かつ積極的に「APAMAN DX」推進等に係る必要な投資や各種経営施策を実行していくことが最も有効な手段であるとの共通認識に至ったとのことです。
一方で、これらの取組みは新規性が高く多額の初期投資を要することとなり、短期的に当社グループの利益水準やキャッシュフローの悪化を招く可能性があるほか、期待する収益を十分生み出すまでに時間を要すると見込んでいるとのことです。
また、当社が上場企業である以上、投資家や株主から当社グループに対して短期的な業績に対するコミットメントが求められているところ、上記の各施策を実行する過程で中長期的な成長を優先する意思決定を行った結果、資本市場から十分な評価が得られず、当社株式の上場を維持したままでこれらの施策を実施すれば、当社株式の株価が下落し、当社の少数株主の皆様に対して不利益を与える可能性も否定できず、当社株式の上場を維持したままこれらの施策を実施することは難しいと考えたとのことです。
出典:IR資料より一部引用(P17)
非上場化によりDXの意思決定を迅速化させる狙いです。
本リリースが発表された同日、TKP社との業務提携契約締結発表リリースもありました。
最後に
なお、アパマンショップさんについては、フランチャイズの記事でも取り上げていました。ぜひこちらもご覧ください。
【2023年版】不動産フランチャイズ11社徹底比較!加盟店数とビジネスモデル、経営方針まとめ色々と資料を見ていると、2022年の資料を発見し、同社のMarketing戦略について触れられていました。中央に位置するのはContent marketingです。2022年の振り返りでは、具体的な施策についてまとめられているので、興味があればぜひ。
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