つい先日、大阪のある町を歩いていると、地面に、このような標(ひょう)が埋まっていました。
よく見ると都市再生街区基本調査 国土交通省と書いてあります。いったい何の調査なのでしょうか?具体的に解説していきます。
目次
都市再生街区基本調査とはなにか?
都市再生街区(としさいせいがいく)基本調査とは、平成16~18年度にかけて、都市部の地籍調査を推進するための基礎的データを整備するために、国が実施した調査です。
地籍調査とは?
地籍調査とは、一筆(※)ごとの土地の、所有者・地目・境界および面積を調査することです。土地の境界が明確になることで、土地取引による経済活動全体の円滑化・活性化につながります。公共事業などの円滑化の為にも早期に取り組みことが必要です。※一筆とは土地の単位で「いっぴつ」と呼びます。
特に、都市部では土地の権利関係が複雑で、調査に時間がかかっていたようでした。
この調査が開始された平成16年度末には、進捗率が全国で46%、都市部で19%と、特に整備がなされていませんでした。都市を再生させていくためには、土地取引の基盤づくりである調査をしていかなければならない!
そのような背景を踏まえて、全国の都市部における地籍整備の推進を図ることを目的に、地籍調査のための基礎的調査を実施する「都市再生街区基本調査」が行われました。
都心部の土地は権利が複雑で、調査がなかなか進んでいなかったんですね。
調査の対象となった地域
それでは、どのような都市が調査の対象となったのでしょうか?
国土交通省は全国のDID地区(人口集中地区)のうち、地籍調査がまだ住んでいない地域、約10,100㎢・719市区町を対象に3ヵ年をかけて調査を行いました。
10,000k㎡とは、カンボジア世界遺産アンコールワットの床面積と同じぐらいです(笑)
DID地区とはなにか?
DIDとは(Densely Inhabited District)の略で、人口集中地区のことを指します。都市的な地域と農村的な地域の区分けや市街地の規模を示す指標として使用されます。実際に存在する地区ではなく、あくまで統計上の地区です。昭和35年の国税調査から設定されました。市区町村の区域内で、人口密度が4,000人/㎢以上の基本単位区が互いに隣りあっていて、あわせて人口が5,000人以上になる地区のことをいいます。
調査の事業内容について
具体的にどのような調査が行われたのでしょうか?
境界に関する資料収集と現地調査
下記の資料を収集しました。
道路台帳附属図(道路台帳平面図・道路区域線図等)
土地境界図面等
公共基準点の配点状況を表示した図面及び測量成果
都市計画図
建物等の状況を撮影した航空写真
公図 等
主に、道路に関すること、境界に関すること、建物の状況に関すること、もともと国に備え付けられていた書類を集めました。
現況測量のための基準点の整備
街区の基準点を測量しました。
基準点とは?
街区基準点とは、都市部の地籍調査を推進するための基礎データを整備するため、国が実施した都市再生街区基本調査により設置した基準点です。街区基準点の成果は、地籍調査だけでなく、都市部における民間開発事業や、不動産登記の際の測量にも活用できます。平成19年10月1日に国土交通省から安芸市へ移管されています。
高知県安芸市さんのホームページから引用
街中でみたのは、この基準点だったのですね!
公図上の角(公図の四隅等)の現況測量
基準点等を基準に、公図の四隅又はこれに相当する地点(街区点)の調査・測量を実施しました。また街区点の測量に必要となる補助的な基準点(補助点)を設置・測量しました。
公図の数値化
紙ベースのものをデータ化しました。
成果の取りまとめ、データベース化
とりまとめとデータベース化が行われました。都市部官民境界基本調査で設置された基準点情報も公開されています。くわしくは都市部官民境界基本調査及び都市部官民協会基本調査の成果の提供システムでご確認いただけます。
また、平成19~21年には、平成16~18年に行われた上記の調査をもとにした、土地活用促進調査が行われました。
調査を行った団体について
調査実施の主体
国土交通省土地・水資源局国土調査課(現:不動産・建設経済局地籍整備課)が行いました。
作業・測量等を行った主体
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が行いました。
まとめ
以上、都市再生街区基本調査について説明しました。20年前以上前に調査がされてから、土地活用促進調査など、さまざまな調査にも活かされています。わたしたちが普段目にする街中にある標識は、国が何らかの背景があって実施したことがわかります。
気になる標識があれば調べてみるのもおもしろいですよ!