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借地借家法を吹き出し付でわかりやすく徹底解説!

借地借家法・・・ってなに?

借地借家法(しゃくちしゃっかほう)を簡単にいうと、家や土地を借りる人を保護するための法律です。

借地借家法は、借主さんを守るための法律である、ということをまず頭に入れておくと理解がスムーズになります。

今回は、借地借家法をわかりやすく解説していきます。

▼前半は「借地」で後半は「借家」です。目次をクリックして読みたい部分をタップしてください。

借地借家法とは

法律では、まず最初にこのように述べられています。

借地借家法 第一章 総則(趣旨)
第一条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。

小難しいけれど、地主さんよりも、借りる人を守る、と覚えておけばいいんだね!

借地借家法「借地」とは?

そして、借地借家法は「借家(しゃっか)」と「借地(しゃくち)」にわかれています。

まずは、建物の賃貸借契約について適用される「借地(しゃくち)」について解説します。

地主であるらいおんくんから、土地を借りようとしているひよこくんと内容を見ていきたいと思います。

土地を借りたいな。

私が地主だ。

ひよこくん(借りる側)のことを、借地権者らいおんくん(貸す側)のことを借地権設定者と言います。

借地借家法が適用される範囲

借地、すなわち土地を借りるときに、全て借地借家法が適用されるわけではありません。

まずは法律の第一条をみてみます。

借地借家法 第1章 総則(趣旨)
第1条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。

上記の通り、建物所有を目的とした土地の賃借について、借地借家法が適用されます。

逆にいえば、青空駐車場や資材置き場など、建物所有を目的としない場合や、一時使用を目的とした場合は、借地借家法ではなく、民法が適用されます

このような青空駐車場の場合は適用はありません。

借地権の存続期間等

土地を借りるなら、出来るだけ長く借りたいな。

借地借家法では借主(ひよこくん)を守るために、賃借人保護の観点から、長く借りられるような特別ルールが備わっています。

借地契約の契約期間

最長期間:制限なし
最短期間:30年

長く借りれる分には制限なしなんだ!最低でも30年借りれるんだね。それなら一安心だ。更新はできるの?

借地権の更新

更新もできます。そして、更新をする場合にも、ひよこくんに手厚い保護があるのです。

更新をすると、契約期間は、更新の日から10年以上初回更新は20年以上)となります。

最初に借りた時:30年
1回目の更新の時:20年以上
2回目の更新の時:10年以上
3回目の更新の時:10年以上
その後は10年以上となります

また、更新の種類は3種類あります。

合意更新:当事者の合意があれば、更新されます。
②請求更新:ひよこくん(借地権者)から契約更新を請求したときは、建物がある場合に限り、同一条件で契約更新とみなされます。
③法定更新:期間が満了しても、ひよこくん(借地権者)が土地を使い続けるときは、ある場合に限り、同一条件で契約更新とみなされます。

また、②③の場合でも、らいおんくんが、遅滞なく正当事由のある異議を述べた時は、契約は更新されません。

ただし、正当事由はなかなか認められません。

手厚く守られているんだな・・・

私も一方的に解約できないんだな・・・

建物が滅失した場合

あのう・・・借りた土地に建てていた建物が、火事で燃えてしまったんですが・・・

借地上の建物が火事で滅失してしまった場合、借地契約が終了するのでしょうか?

借地借家法では、存続期間満了前に滅失した場合と、期間満了後に滅失した場合で決まりがあります。

存続期間満了前に滅失した場合

借地権の存続期間満了前に建物が滅失しても、借地契約は終了しません

火事で建物がなくなった後に、また建て直しました。

ひよこくんが残存期間を超えて存続すべき建物を築造した時は、らいおんくん(借地権設定者)の承諾がある場合に限り、承諾があった日建物が築造された日いずれか早い日から20年間存続します。

この期間より長い場合、その長い期間になります。

また、ひよこくんが、らいおんくんに対して、新たに築造する旨を通知した場合、らいおんくん(借地権設定者)が2ヶ月以内に異議を述べなかった時は、原則、らいおんくんの承諾があったものとみなされます

存続期間満了後に滅失した場合

ひよこくんは、解約申込ができます。

この場合、3ヶ月を経過することで借地権は消滅します。

借地権の効力

次に契約をした時の効力についてです。

借地権の対抗力

私の土地を、他の人に売却することにしたから、後はよろしくお願いします。

このように、途中で持ち主が変わった場合を考えます。

土地を借りる時には、登記を請求する権利は、ひよこくん側には認められていません。

そのため、今借りているらいおんくんから新たなオーナーに変わった場合、登記がないと対抗できないのでしょうか?

それではあまりにもひよこくんがかわいそうです。

そこで、借地借家法では、土地の上にひよこくんが登記されている建物を所有している時は、新たなオーナーに対抗できる(土地を借りる権利があると主張できる)ことになっています。

(借地権の対抗力)借地借家法 第10条 
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

借地借家法

ただし、配偶者名義や長男名義などの場合、第三者に対抗できません。

もし登記した建物が滅失していたらどうなるの?

この場合は、ひよこくんが以下の内容を掲示すれば、第三者に対抗することができます。

①建物を特定するための必要事項
②滅失があった日
③建物を新たに築造する旨

③の場合は、滅失日から2年経過前に新たに築造し、かつ建物登記をしなければ、第三者に対抗できません。

転借人の保護

期間満了で終了する場合、土地の上に建っている建物は取り壊さないといけないの?

ここで、期間満了で終了する場合、借地借家法では建物買取請求権という制度が設けられています。法律でこのように定められています。

借地借家法 第13条 
借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

借地借家法

建物買い取ってください!と請求できるんだね。

また、ひよこくんが第三者に借地上の建物を譲った場合、第三者はらいおんくんに建物買取請求権を行使できます

借地借家法 第14条 
第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

借地借家法

ただし、ひよこくんが借地上の建物を譲渡するときは、原則としてらいおんくんの承諾が必要です。貸す場合は承諾不要です。

らいおんくんが承諾しない場合は、らいおんくんの承諾に代わる、裁判所の許可制度が設けられています。

裁判所の許可制度

裁判所の許可を申し立てる人建物買取請求権を行使する人
借地契約の更新がない場合ひよこくん(借地権者)
借地上の建物を譲渡する場合ひよこくん(借地権者)建物をひよこくんから譲り受けた人
借地上の建物を競落する場合競落人競落人

競落人とは「競売」で建物を落とした人です。

定期借地権等

上記で見たように、借地契約は、ひよこくんに有利な契約になり、更新もされやすいです。

しかし、双方が期限付きの契約を結びたいと考えた時には、定期借地権(ていきしゃくちけん)という制度が設けられています。

定期借地権の種類

そして、定期借地権には3種類があります。

①長期の定期借地権
②建物譲渡特約付借地権
③事業用定期借地権

漢字が多くてよくわからないや!

一つずつ説明していきますね!

長期の定期借地権

長期の定期借地権(ちょうきのていきしゃくちけん)は、借地借家法第22条に定められています。

存続期間を50年以上として借地権設定を行う場合、契約更新の延長がなく、建物買取請求権がないことを定めることができます。そして、その特約は書面でしなければなりません。

(定期借地権)借地借家法 第22条 
存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない

借地借家法第二十二条

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権(たてものじょうととくやくつきしゃくちけん)は、借地権を消滅させるために、その設定後30年以上経過した日に、らいおんくん(借地権設定者)に対して、相当の対価で建物を譲渡する旨を定めることができます。

(建物譲渡特約付借地権)借地借家法 第24条 
借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。

借地借家法第二十四条

また、この特約は必ずしも書面で行う必要はありません。

事業用定期借地権

事業用定期借地権(じぎょうようていきしゃくちけん)は、事業のために建物を所有することを目的に、存続期間を10年以上50年未満として借地権を設定した場合、法定更新や建物買取請求権等の規定が適用されません。この設定契約は公正証書でしなければなりません。

(事業用定期借地権等)第二十三条 
専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。

借地借家法第二十三条

定期借地権のまとめ

それでは、表としてまとめます。

借地借家法「借家」とは?

次に、借家を見ていきます。

建物賃貸借契約の更新等

建物を借りるなら、出来るだけ長く借りたいな。

土地を借りて建物を建てるとなると、できるだけ長く借りたいと、ひよこくんは思っています。借家契約をする場合、賃借人保護の観点から、長く借りられるような特別ルールが備わっています。

借家契約の契約期間

最長期間:制限なし
最短期間:制限なし ※ただし、期間を1年未満とした場合、期間の定めのないものとみなされる

制限はないんだね!でも、期間を定めていなかったら、いきなり出て行けとか言われないかな?

仮に、賃貸人から解約の申入れがあった場合でも、解約の申入れ日から6ヶ月経たないといけません。さらには正当事由が必要とされており、この正当事由は余程のことでないと認められません。

また、6ヶ月が経過したとしても、ひよこくんが使用を継続していた場合、賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ、同様の更新をしたとみなされます。

このことを法定更新といいます。

例えば2年と期限が決まっている場合はどうなるの?

期間の定めがある場合でも、当事者が期間の満了の1年前から6ヶ月前までに相手方に対して、更新をしない通知がなかった場合、これも契約を更新した(法定更新)とみなされます。

通知をしても、ひよこくんが使用を継続していた場合、賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ更新したものとみなされます。

期間の定めがない場合と同様、賃貸人からの更新拒絶には正当事由が必要です。

さらに、ひよこくんが期間が満了することを、その1年前までに知らなかった場合に限って、裁判所は、ひよこくんの請求で、明け渡しにつき相当の期限(1年を超えない範囲)を与えることができるのです。

賃借人は色々と守られているんだね。

そうですね。そして、下記の条文も、保護を裏付けるような条文になっています。

(強行規定)第三十条 
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする

借地借家法

建物賃貸借契約の効力

次に建物賃貸借契約をした時の効力についてです。

建物賃借権の対抗力

契約の途中でオーナーが変わったら借り続けられるの?

建物を借りる時には、登記を請求する権利は、ひよこくん側(賃借人)には認められていません。

そのため、今借りているオーナーから新たなオーナーに変わった場合、登記がないと対抗できないのでしょうか?

それではあまりにもひよこくんがかわいそうです。

そこで、借地借家法は、建物の引き渡しを受けていれば、新たなオーナーに対抗できる(建物を借りる権利があると主張できる)ことになっています。

(建物賃貸借の対抗力)第三十一条 
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

借地借家法より

転借人の保護

あと、僕が途中で別のお兄さんに建物を貸したりしてもいいのかな?

賃貸人の承諾をもらうことで、賃借権を譲渡したり、転貸することができます。

その場合、ひよこくんが貸した登場人物(お兄さん)がもう一人増えるわけです。

ひよこくん、建物を貸してくれてありがとう。

すると、賃貸人とひよこくんの契約が終了したら、お兄さんも即座に出ていかなければならないのでしょうか?ここでは、転貸人(ひよこくん)が、賃貸人(オーナー)とどのような流れで契約を終わらせているかによって、転借人(お兄さん)の立ち振る舞いも変わってくるのです。

契約の終わり方転借人への対抗
期間満了・解約申し入れオーナー(賃貸人)は、お兄さん(転借人)に通知をしなければ、転借人に対抗できない。通知日から6ヶ月経過で終了。
合意解除オーナー(賃貸人)は、お兄さん(転借人)に対抗ができまない
債務不履行による解除ひよこくんが家賃を払わないなどの債務不履行(さいむふりこう)の場合、転借人にも、賃料を支払う機会を与える必要はない。

建物を貸すのも責任重大だね!

定期建物賃貸借について

先ほど見た通り、更新の際には、ひよこくん(借主)の方が有利です。

しかし、場合によっては更新も必要にならないケースもあるかもしれません。1週間の催事で使う時に建物を借りるケースなど。

そこで、契約の更新がない、定期建物賃貸借という制度も設けられています。下記の図を見てください。

定期建物賃貸借

期間合意して期間を決定(1年未満でもOK)
内容契約の更新がない旨の特約
方式公正証書などの種類で契約し、書類交付と期間の満了で終了する旨を説明しなければならない。
終了オーナー(賃貸人)から:期間が1年以上の場合、期間満了の1年前から6ヶ月前までにひよこくん(賃借人)への通知が必要。
ひよこくん(賃借人)から:200㎡未満の居住用の家に住んでいて、かつやむを得ない事情がある場合に、解約申し入れができる。その申し入れ日から1ヶ月後に終了する。

(※1)契約書面と説明書面は別であることが必要です。賃貸人が説明をしなかった場合は、契約の更新がない旨の特約は無効になります。

まとめ

以上、借地借家法の借家についてまとめてみました。

実際の具体例をこちらの記事でも解説していますので、よければ読んでみてください。

リアルにイメージが湧くと思います。

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