こんにちは、不動産のOTOMO(@zebrakun24)です。
今回は、とある不動産会社で経費削減、利益率改善に取り組んだ話をします。
現場でIT化や新しいことに取り組みたいが、なかなかうまく進まない・・・
うちは中小企業でアナログだから無理だと思う・・・
とお悩みの不動産会社さん向けに書きました。
私は2020年夏頃に地方の不動産会社に売買営業として飛び込み、社内のIT化も並行して行ってきました。
取り組みが一区切りしてある程度の成果も見えてきたので、今回体験談をまとめてみます。
後ほど詳しく述べますが、得られた成果の一例です。
- 広告宣伝費を前年比で40%減(数千万円)
- 自社集客・成約が前年対比2倍
- 自社物件の経費が前年比20%減
- 全社員のITに対する抵抗が薄れた
所感としては大変だったけれどやって良かったです。
自身の経験をシェアすることで、不動産業界全体がもっとIT化に前向きになれば嬉しいです。
実際の失敗談や気づきも書いていきます。
目次
老舗不動産会社のアナログな現状に直面
私が未経験で飛び込んだのは、地方の昔ながらの不動産会社。
創業約40年で平均年齢は50代、役員は60代でした。
毎朝掃除と朝礼があり、月に1回ラジオ体操もしていました。
ガッチャンするタイプのタイムカードで、大量の紙・FAXが使用され、ホワイトボードでスケジュール管理をしています。
入社初日には机に『電話の伝言ノート』が置いてあり面食らいました。
私はゆとり世代なので、FAXも使ったことがない、と言ったら軽く怒られました。
▼電話の伝言ノート
違和感を持ちながら現場経験を積む
若手中心の職場で働いてきた自分にとってSlackやLINEでのやりとりが当たり前でした。
そんな中電話の伝言が、会社に戻らないと確認できないのは非常にもどかしいものでした。
このノート、全てLINEにすれば終わることなのに。
合理的に考えれば当たり前のことも、いきなり新人が提案しても受け入れてもらえません。
まず営業として採用された私は、先輩や上司の言われる通りに現場で動き回りました。
毎日調査し、ポスティングをまき、お客さまの対応をし、草刈りをし、とにかくなんでもやります。
大量の紙やFAXなどを使っていました。
いや、使わざるを得なかったのです。
なぜなら先輩も行政も取引先も金融機関も紙を使っていたから。
不動産業界はアナログと言われるのは、不動産会社だけに原因があるのではないなと思います。
しばらく経つと全体の業務を通して、ここをこうしたらいいのでは?というものが見えてきます。
ここからが本当の戦いです。
不動産会社の経費削減の第一歩はLINEとGoogleをフル活用
まず取り組んだのは、LINE WORKSの登録です。

社員が数十名の会社でしたが、ITに詳しい人はいませんでした。
なので全員分のアカウントを人力で作り、一人ずつスマホにダウンロードしていきます。
ちょうどコロナのタイミングだったこともあって、すぐに浸透していきました。
LINEはみんなが既に使っていたので馴染みがあり説明しやすいのです。
都度、ログイン方法は?パスワードは?と質問状態があちこちで発生しますが、根気強く説明していきます。
LINE WORKSは最初は無料で使えますが、ある容量を超えると月額がかかるようになります。
それでも便利なので継続に賛成してくれる人は多く、無事に浸透していきました。
余分なFAXや電話、資料送付のメールなどは減っていきます。
Googleの登録も行う
次に、Googleアカウントも人数分作成します。
例えば
- otomo1@gmail.com
- otomo2@gmail.com
- otomo3@gmail.com
と一人ずつ個別の名前を割り当てていきます。
これは「スプレッドシート」を使うことが目的です。
ご存知の方も多いかと思いますが無料で使えるエクセルのオンライン版のシートのようなものです。

実現したかったことは、全員が独自でデータ管理することを防ぐこと。
組織としてそれ自体が問題だという意識はありませんが、管理ファイルが違うと以下のような現象が起きます。
- 報告される数字がバラバラのため正しい意思決定ができない
- 同じ作業をしている可能性があり、現場の疲弊につながる
- 全員の意思疎通が図れない
そこで、役に立つのがスプレッドシートです。
エクセルをかき集めてシートを作成。
例えば、以下のようなものをまとめていきます。
- ポスティングの報告が全員からFAXで来て紙で記帳している→スプレッドシートへ
- 案件進捗をホワイトボードと紙で転記している→スプレッドシートへ
- 10物件あれば10エクセルがある→1つのスプレッドシートへ
▼こういうエクセルファイル(タブが月ごとに分かれている)を

▼こういうスプレッドシート(1枚にまとめる)にします

オンラインで、全員が最新のデータを同じ条件で見れることが条件です。
そうしないとまた、個人のオリジナルデータがどんどん生成されていきます。
入力項目を極限に減らして、ここだけ入力してください、という形にします。
スプレッドシートは自動で上書き保存される点も便利なところです。
ファイルはどこに保存されるの?と度々言われますのでブックマークバーの左端に固定します。

スプレッドシートの費用はゼロです。
前向きな人と協力する
この取り組みの中で、実際乗り気でない人も多いですが前向きな人が出てきます。
サインとしては「便利だね」と言ってくれる人。
その人は後々の施策も賛成してくれたり、後押ししてくれる可能性が高いです。
肌感覚としては組織の中では賛成1、反対1、何も言わないが8の感覚です。
その人を見つけ出して、仲良くしておきます。
キーマンを探し出すイメージですね。
経費削減のコツと利益率を上げるための必勝法

次に契約台帳と総勘定元帳(広告宣伝費)5年分を見直しました。
なぜ広告費かといえば、余分な費用が見た感じ多かったので詳細を知りたかったらです。
地方でITに詳しい人材が少なく、サービス運営会社の言うがままに垂れ流し状態になっていました。
(業界全体でこの溝をもっと埋めていきたいです。)
契約台帳は宅建業者が事務所に備え付けていますのでデータを引っ張り出してまとめます。
結構あるあるだと思いますが、データが全てがバラバラで統一されおらず、正確なデータの記録がなかったりします。
- A:事務員さんが独自作成しているファイル
- B:各営業がまとめたファイル
- C:経営陣が独自で作成したファイル
統合を目指し、各営業マンなどに聞きながら多少粗くても作り上げていきます。
・チラシだったかな?
・これは確か査定サイト経由
・看板見て問い合わせもらったかも
100%正しいデータが作れなくても現状のアタリをつけるために整理していきます。
契約台帳をまとめるイメージ
5/1に契約した大阪市の物件Aは査定サイトAで成約…っと。

こんな感じで5年間洗い出していきます。
気合と根性でなんとかなります。特に難しいものではありません。事務員さんとも協力しながらまとめます。
反響元ごとにどれだけ結果が出たかを整理します。

総勘定元帳のデータの洗い出し

次に総勘定元帳を見せてもらい一つずつ整理していきます。
私の前職はクラウド会計ソフトを使っていたので自動計算されていたのですが、今回は保管された紙を手作業でひたすら手分けしていきます。
それぞれの項目を年間ごとにまとめます。
▼サンプル

そうして、先程の契約台帳とドッキングさせていきます。
ポイントは3つです。
- どれだけお金を使ったか(総広告費)
- どれだけ反響があったか(CPA)※反響単価を知るため
- どれだけ契約があったか(CPO)※契約単価を知るため
▼ドッキングしたサンプル

さらに上記の広告費を洗い出し、請求書までさかのぼってみていきます。
すると、必ず使っていないオプションがあります。
3つのサービスで各月々5,000円使っていれば、5,000円×12ヶ月×3=18万円になります。
余分な経費や成果が出ていない媒体を洗い出しそのオプションを止めれば費用がどれぐらい浮くかを精査していきます。
▼精査したサンプル

不要なオプションを削ることと、結果が出ていない媒体をやめることで年間で数十万円浮くことも少なくないです。
このように必ず結果が出るポイントを見つけ、事前に整理しておきます。
経費の整理ができたらシステムの入れ替えとWEBサイトリニューアル
広告費の土台を整え終えたら、次に基幹システムを入れ替えます。
元々とある物件コンバート・顧客システムを使っていたのですがあまり機能していませんでした。
理由は以下の2点
- クラウドではなく1人1台のインストール型であったこと
- システムとホームページが連動していたため自由にカスタマイズできなかった
昔ながらの感じで古臭く感じてしまいがちです。
今はホームページの写真やデザインひとつで判断される時代ですので、しっかり投資すべき分野です。
色々と検討した結果、以下の組み合わせでシステム周りを整えることにしました。
主目的 | 依頼先(利用システム) |
---|---|
不動産管理システム | いえらぶさん(いえらぶCLOUD) |
ホームページ | デザイン会社(Wordpress) |
物件検索システム | Athomeさん(検索エンジンレンタル) |
機能面では不動産会社向け基盤システムで事足りますが、独立させたほうがカスタマイズ性が高まります。
以下、具体的に切り分けの方法と機能を説明します。
不動産管理システム
まず核となるシステムはいえらぶさんにお願いしました。

不動産業界の方であればご存知の方も多いでしょう。
主に以下の機能を利用するためです。
- 顧客登録
- 物件登録(ポータルサイトへの一括登録用)
- 自社物件の入居者管理
検討に当たって今市場に出ている5社の商品を調べて話を伺いましたが、決めては以下でした。
- 売買・賃貸・管理・リフォーム全ての機能を備えていたこと(ほぼなかったです)
- アップデートが早い
- 営業の方のレスポンスがよく人柄が素敵
- 月額コストが適正
- アフターサポートがある
現場に馴染みやすい形で設計されており、導入後もサポートいただくことができました。
ただし、機能が多いことと導入が追いつかずまだ使いこなせていませんので一つずつ進めています。
ホームページ
ホームページはデザイン会社にお願いします。
投資すべき分野と決めていましたので『Wordpress』が得意なデザイン会社を選定してリニューアルしました。

特に力を入れたのは以下です。
- 自社で客付けしたい物件の特設ページを作る
- 査定の流れを作る
- ブログ機能をつける
- スタッフ紹介は写真とプロフィール(100字以上)にこだわる
繰り返しですがホームページ機能付きのシステムよりWordpressを使った方が後々よかったです。
以前は、カスタマイズやデザイン変更がしづらく、意思決定のスピードが落ちたからです。
WEBサイトで力を入れるべきところ
WEBサイトで力を入れるべきところはスタッフ紹介ページと主力サービスです。
これはリニューアル前・後問わず、アクセス数が多くて一番差別化がしやすいページでした。現にアクセス解析をすると一番PVは多いです。
スタッフ紹介ページはきっちりプロのカメラマンを入れて、プロフィールも充実させます。
リニューアル後1年してホームページからの問い合わせは2倍以上に増え、やはりリニューアルしてよかったという周りからの声も高まりました。
結果として『自社物件の集客を業者付から自社で可能に』『査定をHPから取れるように』なりました。
物件検索はATBBでコスパ重視
また、WEBサイトを作る上で問題となってくるのが『物件検索』です。
売却特化が目的のリニューアルだったため優先順位は落ちましたが、物件検索機能も必要です。
この検索システムをWEBサイトと物件コンバートシステムで繋ぎ込むには、大変費用がかかりシステムのリスクも高くなります。
そこで方法を模索したところ、Athomeさんの『検索エンジンレンタル』を教えてもらいたどり着きました。
URLを発行すれば物件表示ができるシステムを月数千円で使うことができます。
Athomeさんの提供の幅はすごいなと改めて感じました。
経費削減の目的を忘れずに新規投資を行う
上記はあくまで土台作りです。
広告費を下げ、経費をさげたはいいけれど結果が出ないじゃんという状態は避けたいところです。
なので、削減と同時にやっていたことは新たなチャレンジです。
SNSやPRを用いた集客の仕組みづくり
具体的にはSNSなどの仕込みをやっておきます。やったことは以下です。
- インスタグラムやホームページでの情報発信
- Google my business
- プレスリリース(広報)
- チラシのデザイン改善
インスタでやることは、物件のいいところを週3で褒めていく写真をアップすること。
携帯ばっかり触って何してるのと言われたり反対意見もありますが我慢。インスタに慣れている世代の方を担当として、やってもらいます。
最初はフォロワーも伸びないし反響もないですが半年ほどして結果が出てきます。
SNSは極論はブログでもなんでもいいのですが、コツコツ無料で取り組めることをやっておいた方がいいかなと思います。
広告費を払って集客していたものが、自社で集客できるようになり広告効果が最適化されるからです。
プレスリリースも配信サービスを使って、根気強く配信することで業界新聞やテレビ・全国新聞にも取り上げてもらうことができました。
本来依頼すれば数百万円かかることもあります。これも月3万程度しかかけていません。
パノラマカメラや査定書作成ツールなども導入
またパノラマカメラもう導入しました。
Spacelyさんというツールを導入しました。

ツールの技術はもちろんのこと、使いやすさやビジュアル、サポートが決め手でした。
ITに強くなくても、簡単に導入できました。
導入の背景として遠方の方や日程が調整できずに取りこぼしていたお客さんも多い、営業の重複作業が多かったことがありました。
これまでは他の業者さんにつけてもらうしかありませんでしたが、パノラマ導入で直接見れるような導線を作りました。
結果的に自社付も増えてAD(広告費)も減るといういい相乗効果がおきました。
このような仕組みは、今後もずっと続くことなので導入してよかったです。
他にも売買が個人でエクセルで作っていた査定書作成システムなども導入しました。
こうして不要なものを減らしコンテンツを積み上げることで必ず結果を出せるポイントを絞り出しました。
特に使っているサービスが多い会社ほど、効果がテキメンではないかと思います。
経費削減に取り組んで得た効果
上記の取り組みを重ねて広告費を40%削減(年間数千万円)自社集客の流入2倍という効果を得ました。
さらに各部署の粗利益率も改善しました。
ただこれらはあくまで現時点での結果論です。
それより価値があったことはツール導入の過程で、全社員で数字を振り返り改善する文化や議論ができたことです。
元々数字で管理する文化がなく、社長や営業の現場的『勘』感覚で決まっていくことが多かったです。
大手であれば数字管理の体制も整っていますが、中小企業ではそこまで手が回っていません。
それを数字としてオープンにしていくことで、全員が数字議論でき、アイデアが生まれていく文化ができてきました。
まずは何事も現状を知らないと、改善の方向性も定まりません。
そのためには細かい整理や改善を行う必要があり、不動産テックツールはそのスピードアップや理想の形を実現してくれるものです。
組織としてITや数字と向き合う経験ができたことで、少しずつ全社員の意識も変わっていっています。
最後に、今回の取り組みを通じて思った特に大切なことを最後にまとめます。
小さく始めるが吉
新しいことに取り組む上で大切なことは「大きく提案せず小さく始める」ことです。
そのためには「無料であること」「簡単であること」この2つが条件として挙げられます。
最終目的は利益を出すことですが、中々現場では目の前の改善とそこが結びつきません。
なので即効性のある取り組み「LINE」や「Dropbox」のように、今までの作業がなんか楽になったね!と小さく始めたものはうまくいきました。
今回は取り上げませんでしたが、他にも色々な無料ツールを活用しています。
自分が体を入れること
不動産テックを導入する上では「企画」と「現場」の2項対立になりがちです。
大手であればトップダウンで進められるものの、中小では中々そうはいきません。
結局導入したけど意味ないじゃん、と言われては、水の泡になってしまいます。
そこで最初はパワープレイですが、自分が率先して面倒くさい作業を引き受けます。
前提とし人は変化を嫌うというイメージで取り組みます。
途中の面倒臭いこともやるからその後は一緒にやりましょう、といえば断りづらくなりますし、相手もその気になってくれます。
これが便利だよ、と言っているだけだと使ってくれません。自分が現場で汗をかくことが必要です。
細かいことですが、毎朝一番に出社する、とか誰よりも掃除する、とかそういうことも大切にしました。
便利の前に信頼関係を積み重ねておくことも重要でした。
反対勢力が賛成する潮目が必ずくる
自分が良いと思った取り組みでも反対する人は必ずいます。
しかし、いつしか潮目が変わる時がきます。
自分だけのことを言って発言したら見抜かれますが、組織としてこういう取り組みをした方がいい、という道筋を立てて黙々と行動していれば必ずそれをみてくれている人がいます。
私も何度も投げ出したくなりましたが、何とか耐えてきました。笑
誠実に、実直にやって周りを巻き込むしかありません。
ローマは一日にしてならずです。
不動産業界の課題とは?利益率を上げることで広がる可能性
ここまでつらつらと述べてきましたが、特に創業が長い会社ほど経費削減の効果は大きいと感じます。
また、既存の不動産業界は以下のような課題も抱えています。
- 進む少子高齢化
- 地方の取り組み率の低さ
- 事業承継問題
▼日本の少子高齢化が進む。人口統計はほぼ確実な統計。

▼不動産業就業者の高齢化・後継者不足(不動産業社長の平均年齢は他産業と比べても高い)

▼地方は特にDXが進んでいない

事実、私の知人の不動産業の経営者の方は、継ぐ人がおらずM&Aの話を検討しているという話も聞きます。
ご子息に継がせるかどうか迷っているというお話、株の話も。
M&Aで会社の経営を継続させる手段ももちろんあるかと思います。
現実問題、組織が変わるタイミングではそう一筋縄ではいかない現実もあります。
私も過去事業譲渡に携わった(買われる側)こともあり、中々組織って難しいなと思いました。
しかし新しいことに取り組む必要性を広めていくことで、業界の働き方も変わり、もっとイメージ良くなるんじゃないかな、と思ってます。
もし似たような環境の会社様で、広告費をなんとかしたい、IT化を進めたいけどおすすめのツールは?というご相談があれば無料で相談に乗ります。バックエンドの商品はありませんのでご安心ください。笑
まだまだ色々な取り組みをしている最中ですので、第二章の記事を公開できる日が来ればいいなと思います。
他にも不動産テック関連の記事を書いてますのでよければどうぞ。
ご連絡はTwitterのDM(@zebrakun24)か以下のお問い合わせフォームからお寄せください。
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