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大江戸温泉物語はなぜ閉館したのか?事業用定期借地権について解説

大江戸温泉物語は、全国で39の温泉旅館・温浴施設を運営するグループです。

先日、創業の地、東京お台場大江戸温泉物語が2021年9月5日に閉店することが発表されました。

2003年に開業して以来、18年間営業し、毎年約100万人の来店される程の繁盛店だそうですが、なぜ今回閉館するのかを調べてみました。

閉館の理由について

同社のホームページで閉館のお知らせのページによると、事業定期借地権設定の契約が終わることが要因であると書かれています。

東京都との事業用定期借地権設定契約が2021年12月に期限を迎えるため、閉館することとなりました。
当社は、創業の地である「東京お台場 大江戸温泉物語」の営業を継続するための様々な方策を検討し、また模索してまいりました。しかしながら、契約締結当時の借地借家法では、契約の最長期間は20年で延長が認められておらず、誠に残念ながら再契約も叶わなかったため、建物を解体撤去し更地にしたうえで土地を返還する必要があることから、9月5日をもちまして、営業を終了させていただくこととなりました。

大江戸温泉 閉館のお知らせ

大江戸温泉物語の建物は解体撤去し、更地になるようです。

事業用定期借地権とは?

事業用定期借地権とは、事業のために建物を所有することを目的に、存続期間を10年以上50年未満として土地を借りる(借地権を設定)することです。

例えば、コンビニやガソリンスタンドなどは、事業用定期借地権で契約されています。

50年まで契約できるんだったら、大江戸温泉物語も事業を続けられたのでは…?

現在の事業用定期借地権は、先ほど説明した通り50年未満で契約ができます。しかし、これは借地借家法が改正された後の現在の法律です。

2008年1月1日以前の事業用定期借地権は、契約期間が10年以上20年までとなっていました。この期間が満了すると借主さんは更地で土地を返さなければなりません

旧法について

このように契約期間が限定されていたのは、事業用借地権の利用シーンが、郊外が発展した影響で発達した郊外型レストランやなど事業計画期間を20年までとする業種に集中していると判断されたからでした。

しかし、年々土地の活用が多様化し、商業施設や物流センターなど、20年以上使いたい、という事業も増えてきたため借地借家法が改正される流れとなりました。

もちろん契約時に20年と結んでいたことは事実でしょうが、世の中の状況は常に変わりますし、何より大江戸温泉の建物価値はまだまだありそうです。

これをわざわざ解体して更地返しというのはあまりにももったいない気がしますが、再契約もできなかったとお知らせにもありますし、仕方のないことでしょうか。

事業用定期借地権の特徴

なお、事業用定期借地権の契約をする場合、借主さんは、返還時には更地で土地を返さなければならず、契約期間が10年以上30年未満の場合、以下のような特約が必要です。

・契約の更新を伴わないこと
・契約終了時に建物買取請求権が発生しないこと
・建物再築による存続期間の延長がないことを特約した借地権の設定契約

そして、これらは公正証書によってなされなければなりません。

契約期間が30年以上50年未満となった場合は、この特約は任意とされます。

(事業用定期借地権等)第23条 
専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。

最後に、他の借地権との違いをまとめておきます。

まとめ

以上、大江戸温泉物語の閉店にまつわる「事業用定期借地権」について解説してみました。

契約だからとまとめてしまうこともできますが、何かと残念な気もします。。。

借地借家法は複雑ですが、こちらの記事でもわかりやすくまとめていますので、ぜひご参考ください。

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