不動産営業と聞くと物件の内見に同行し、契約をする仲介業をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
仲介業と比べると一般的にはあまり認識されていませんが、物件をオーナーから預かる管理会社では、リーシング営業はとても重要なものになります。
そこで今回は、大手商社のグループ会社でリーシング営業を担当している筆者が、リーシング営業の詳細について解説していきます。
このような方に向けて疑問を解決します。
- 賃貸管理会社のリーシング営業の仕事を知りたい
- リーシング営業のコツを知りたい
- 仕事のやりがいや大変さを知りたい
実際にリーシング営業を行っている方に記事を書いていただきました!
目次
リーシング営業とはなにか?
リーシング営業とは、オーナーから管理を委託されている物件を、早期満室にするため営業活動をすることです。
そのためには、過去の成約実績や競合物件の動向を分析し、根拠に基づきオーナーに募集条件を提案する力が必要になります。
また、その後早期満室に繋がるよう仲介業者へ営業活動をおこないます。
分析力、提案力、フットワークの軽さが必要になり、リーシング営業が強い会社はオーナーからも信頼が得られやすく管理を任せてもらいやすい傾向があります。
ちなみに筆者は、主にJ-REITの居住用賃貸マンションをリーシング担当しています。
REITって何?という方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
リーシング営業の仕事内容と営業方法
リーシング担当が対応する流れは大まかに以下の3つです。
- マーケット調査
- 営業活動
- 契約締結
基本的な業務の流れを、順番に説明していきます。
マーケット調査を行い募集条件の提案
空室になった物件は家賃収入が得られず機会損失になってしまうため、早期に入居者を決める必要があります。
そこで募集するにあたり、過去の成約実績や近隣競合物件の動向を調査したうえでオーナーへ募集条件(敷金・礼金・家賃など)を提案します。
J-REITを取り扱うオーナーとは「投資法人」を指します。
投資法人は利回りに対し、投資家の方たちに論理的に説明ができる根拠を常に求めています。
そのため、募集条件の提案時におこなうマーケット調査は最も重要な作業。
提案時には具体的な数字や根拠の提示が必要になります。
募集図面を作成する
募集条件が決定したら図面に情報を落とし込みます。
不動産屋で物件を紹介する際に渡す間取り図や条件が記載されている資料のことです。
業界用語では「マイソク」と呼びますが、商品チラシになりますので物件の魅力をきちんと表現できるように作成には力を入れます。
具体的には諸条件の他に近隣の商業施設の情報も入れたり設備が分かる写真を挿入します。入居後の生活がイメージしやすくなり、また仲介業者も紹介しやすくなります。
仲介業者へ向けて営業活動をする
マイソクが完成したら不動産業者間流通サイトへ物件情報を登録します。
また、自社サイトに写真を掲載したり仲介業者へ訪問して募集図面を配り営業活動をおこないます。
ただ募集図面を渡すだけではなく、最近部屋探しをしている方の希望家賃帯や近辺の新築競合物件があるかヒアリングをするなど仲介営業担当者と情報交換をおこないます。
また、筆者が担当している物件は相場に比べ価格帯の高い、いわゆる「高級賃貸マンション」を扱っています。
そのため、営業先の仲介業者もある程度的を絞ります。
- 過去成約実績がある
- 高級賃貸物件の取り扱いを売りにしている
- ネットでの集客に力を入れており物件写真が充実している
主に、上記のいずれかを満たしている仲介業者に向けて訪問をするよう心がけています。
リーシング営業は直接入居希望者と対話するわけではありません。
そのため、ターゲットとしている客層が訪問するであろう仲介業者を想定し営業活動することが重要になります。
入居審査→契約
入居希望申込書を受領したら、入居希望者の内容を確認し審査をします。
管理会社によって審査基準は異なりますが、審査通過後、契約締結をして晴れて成約となります。
また、賃貸管理や建物管理との違いを知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
不動産管理の仕事内容を徹底解説!賃貸管理・建物管理の違いをしろう
リーシング営業で成果を出すコツとは?
リーシング営業で効率良く成果を出すためにはいくつかコツがあります。
筆者が心がけている成果を出しやすいコツをご紹介します。
過去の成約実績を調べる
現在入居しているテナントの属性を細かく調べます。
具体的には、性別・年代・勤務先・成約賃料、客付けした仲介業者情報などがあります。
どのような人物に好まれる傾向がある物件なのかを理解するため重要な作業になります。
もしリノベーション後募集するのであれば、女性向けか男性向けどちらのデザインにするのか等の参考にすることができます。
また、客付けをした仲介業者情報は営業活動をする際の参考になるため、押さえておきたいポイントです。
現在のエリアの価値や競合物件を調査
マーケットの動きは常に変化していきます。
過去の成約実績だけではなく、土地価格の上昇もしくは下落、新築競合物件の状況なども念入りに調査が必要です。
例えば駅からの距離や築年数、部屋の広さや設備が同等の競合物件が8万で募集が出ているところに10万で募集を出しても成約できる可能性は低いですよね。
このように市場と募集条件の乖離が起こらないよう、事前に周辺競合物件の調査をすることは早期成約を目指すうえで非常に重要です。
オーナーや仲介業者とこまめにコミュニケーションをとる
どの仕事にも共通することですが、取引先とのこまめなコミュニケーションは仕事を円滑に進めるためにとても重要なことです。
リーシング営業でいう取引先とは「オーナー」と「仲介業者」になります。
どちらからも信頼を得るためには、丁寧な対応、早いレスポンス、こまめな情報共有が不可欠です。
信頼を得られるとオーナーへの条件交渉や、仲介業者からの客付けもしてもらいやすくなり、業務が円滑に進むようになります。
リーシング営業のやりがい
日々の仕事を続けていくうえでやりがいはとても大切なものです。
そこで筆者が感じるリーシング営業のやりがいについて解説していきます。
提案した条件で早期成約できたとき
入念なマーケット調査と営業活動をおこなったうえで、早期成約できたときは自身の提案が間違っていなかったと実感できとても達成感があります。
早期成約できるともちろんオーナーからも感謝されますし、信頼も得ることができ、とてもやりがいを感じることができます。
営業力を評価されて新規物件を任せてもらえたとき
オーナーはとても数字にシビアです。
家賃が収入に直結するため当然のことですが、営業力を評価されると新たにオーナーが保有している別物件の管理を任せてもらえることがあります。
信頼と実績が積み重なった結果といえますが、会社の利益にも貢献できますし営業力にも自信を持つことができます。
リーシング営業の辛さ
やりがいを感じることができる反面、リーシング営業をしていく中で辛い、しんどいなと感じる場面も幾度とあります。
具体的にどのような場面か解説していきます。
提案した募集条件で決まらずオーナーに詰められる
マーケット調査をしたうえで適正価格で募集を出したつもりでも、すぐに申込が入るとは限りません。
オーナーからしてみれば「そちらが提案してきた条件で募集を出しているのになぜ決まらないんだ。」となります。
ごもっともな話なのですが、募集を出した時期に条件に当てはまるお客様がいるかどうかは実際に募集を出してみないことには実際は分からないものです。
提案した条件で成約に繋がらないことは責任を感じますし、オーナーに結果が伴っていない状況報告をすることは辛いものがあります。
物件に申込が入るかどうかは仲介業者次第
リーシング営業は物件を探している方に直接営業をするわけではないため、物件に申込みが入るかどうかは仲介業者次第のところがあります。
仲介業者は希望に合った物件を案内することが仕事ですから、当然「こちらの物件を紹介お願いします。」と営業をかけても、お部屋探しされている方が提示する条件とマッチしなければ紹介していただくことはありません。
リーシング営業としてできることはやりつつ、ある程度の期間は申込みが入ることを待つ「忍耐力」を持つことが必要になります。
リーシング営業を目指す方へのアドバイスとまとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はリーシング営業のコツと具体的な仕事内容について解説しました。
不動産の営業ときくと泥臭いイメージもありますが、リーシング営業は入念なマーケット調査に基づいた提案が基盤になり、細かい作業がとても重要になります。
地道な作業をコツコツ積み重ねることが、結果として1番成果が出やすく、オーナーからの信頼にも繋がります。
筆者はリーシング営業を通じて、提案力やコミュニケーション能力を身につけることができたと思っています。
元々提案力やコミュニケーション能力に自信がある方、もしくはこれから身につけていきたいと考えている方にはリーシング営業はおすすめの職種になります。
不動産仲介の営業とはまた違った営業スタイルになりますが、どちらもやりがいのある仕事です。
近年は、不動産業界専門の転職エージェントも出てきているため、転職活動も進めやすくなっています。
不動産転職は、色々な仕事があり、会社も様々。
自分にあった不動産会社を、最適なタイミングで見つけることが転職成功の鍵です。
チャンスを逃さないためにも、転職エージェントを利用して、理想の会社や働き方を見つけましょう。