こんにちは、不動産のOTOMOです。
不動産会社でDXを進めていきたいが中々うまくいかない。
電子契約に興味があるものの、導入して変化するのが不安。
不動産業界では近年急速に「DX」や「電子契約」という言葉が広まっていますが、そもそもDXに取り組む必要性は意義はどこにあるのでしょうか?
今回は、不動産・建築DXプラットフォーム「PICKFORM」を開発する、株式会社PICK代表の普家さんに不動産業界のDXについて伺ってきました。
DX導入に悩んでいる方はぜひお役立てください!
以下のようにお考えの方に読んでいただきたい記事です。
- 不動産会社でDXを導入しているがうまくいかない
- DXは必要ないのでは?と感じている
- 電子契約などに取り組んでいきたい
株式会社PICK代表取締役社長 普家 辰哉 様
新卒で積水ハウス株式会社に営業職として入社し、2016年に全国3300名中1位を獲得。 その後2018年に不動産会社を立ち上げ独立、2021年にPICKに社名変更をして不動産テック業界に参入。現在は不動産・建築DXプラットフォームPICKFORMを運営。
※本インタビューは2024年6月時点の内容です。
聞き手:不動産のOTOMO
目次
なぜ不動産業界はDXが遅れているのか?高齢化が進む業界に対する切り込み
ー本日はよろしくお願いします!不動産業界はアナログと言われますが、DXが進まない理由をどう見られていますか?
普家さん:よろしくお願いします!理由はシンプルで業界のビジネスの構造にあると思っています。1つは、不動産や建築の単価が高く利益のグロスが大きい点が挙げられます。
例えば、一人社長の会社で1件の取引で粗利益が2,000万円出たとしたら「もう今年は働かなくてもいっか」となってもおかしくないですよね。
普通にこういう稼ぎ方ができてしまう業界ですし、そこにDX化をして業務効率化する合理性はないですもんね。
2つ目は情報の非対称性が大きく、個人の買主や売主(エンドユーザー)より不動産会社の方が優位な点です。そのためエンドユーザーからの外的圧力が効かないことも、DXが進んでこなかった背景だと考えています。
ー納得です。「成り立っているからやらなくてもいいのでは?」という見方もできますが、この辺りはどうでしょうか。
普家さん:これから不動産会社は2極化していくと思っています。今までは建てれば売れる時代でしたが、今後はそうではありません。
何かしら工夫や経営努力をしないと、うまく対応できる会社とそうでない会社の差が出てくると思っています。自然と淘汰されていく会社も出てくるかもしれません。
とはいえ、どんどん廃業するのが良いという話では全くありません。不動産会社は全国津々浦々小さい会社があり、インフラとして成り立っている側面もあります。
ツールを活用することでもっと売上が上がりますよ、という価値観を広めていきたいです。
PICKのすごい営業戦略。不動産会社の中に入り込むことで成し得るDX
ーPICKさんはどのように営業されているのでしょうか。
普家さん:先ほど外的圧力では変わらない、という話をしましたが、不動産会社さんに対して「不動産テックは経済合理性が合います」「ツールを導入すると便利です」と言っても効きません。
私たちは不動産会社の中の人間のような感じで、業界に馴染んでいきサービスよりPICKとしての価値を売ることに注力しています。
ー具体的にはどのような動きをされていますか?
普家さん:現場に出る営業は、不動産や建築業界出身者のため、不動産の話ができるのが特徴です。PICKのサービスの話だけではなく、どんな物件を仕入れたいですか?出口に困っている物件はありますか?と不動産屋的な動きもできます。(※PICK社では仲介業務を行わず、単純にPICKのお客さま同士をお繋げするとのことです)
ただ在籍していただけではなく、トップ営業もやっていたため、経営者や営業マンの困りごとが解像度高く分かります。適切なアドバイスをすることで、PICKFORM以外の部分でもしっかりと価値提供していますね。
ー業界出身者の方々が営業をされているのは珍しいですね。
普家さん:そうですね。また、先日は初めてPICK主催のゴルフコンペも行いました。PICKFORMを使うことでコミュニティが生まれ、普段ない仕入れルートなどもできます。
ーコンペ、すごいですね!そこまでされている会社はあまり聞いたことがありません。
普家さん:ずっとやりたいという構想があり実現しました。いざ開催してみると実際にコンペから2件成約が生まれました。
ツールを使ってもらうことも大事ですが、まずはハードルを下げてコミュニティに参加してもらうことが大事だと考えています。サービス良いですよ、だと浸透しないと思うので、コミュニティに参加することに価値がある、と思ってもらいたいです。
参加者もツール導入を行なっている前向きな方が多く自然と話も合いますよね。今回は関東だけでしたが、関西、九州、東北とかでもやりたいです。
私たちは業界の中にいた人間なので、IT企業と不動産会社のギャップを埋めていくことで、いい相談役でいたいですね。
電子契約のメリットデメリットは?導入を進めるために必要なこと
ー次に、電子契約のメリットを教えていただいてもいいですか?
普家さん:電子契約のメリットは経済的なところで言えば印紙代がかからない点です。
不動産会社さんが売主であれば自社もかからないし、エンドユーザーもかかりません。また、現段階では導入している会社の方が少ないので、不動産会社自身の競合優位性(差別化)にもつながります。
営業の現場目線では、とにかく手間が減ります。契約書の製本も不要ですし、契約以外にも覚え書きや媒介・書類の印鑑をもらいに行く必要もなく、郵送手配しなくていいことも大きいメリットです。
ー良いことづくしです!逆に電子契約のデメリットはありますか?
普家さん:強いてあげるとすれば慣れるまでは、取引が電子でいいの?という気持ちになりますね。紙に印鑑を押さないので実感がないですよね。
後は、今までの業務フローが変わってしまうので、オペレーションを敷き直さないといけない点でしょうか。大企業であればあるほどルールを明確にしないといけない部分はデメリットかもしれません。
ーオペレーションの部分は確かに二の足を踏みそうです。そのデメリットはどのように払拭されているのですか?
普家さん:不安な点は不動産会社さんと都度解消しています。現場の契約に同行したり、契約前の準備時に大丈夫ですか?とチェックをしたりサポートには力を入れています。
オンボーディング(サービス利用時のサポート)の時は、店舗に伺ってロープレも行うので、すごく納得していただけます。6月には北は北海道から南は沖縄まで、20都道府県訪問させていただきました。今後の拡大に合わせて支店も置いていきたいです。
ー不動産会社としても安心ですね。PICKさんのサービスはパソコンが苦手でも使えるのでしょうか?
普家さん:パソコンが苦手な方ほど使ってほしいですね。なぜなら、僕が一番パソコンが苦手なので、その原体験をもとにプロダクトを見て、自分が感じることをそのまま生かしているためです(笑)。
ボタンが多いから分かりづらい、もっとシンプルに、などのシミュレーションを試しています。ITリテラシーがなくても使いやすいようにこだわっており、一番高齢の方だと75歳の方で導入していただいている社長様もいます。
ー心強いです。上司への説明が難しい、という人も多いですよね。
普家さん:そうですね。そこは、若手の方とも一緒に上申しています。現場でどのように使うか、はどうしてもマンパワーを使ってサポートする部分です。
知らないと宅建業法違反?不動産電子契約の注意点とは?
ー以前Xで拝見した「宅建業法違反になる可能性」の投稿が気になったのですが、詳しく教えていただいてもいいですか?
普家さん:考え方として、重要事項説明書の原本の保存の必要性があります。従来の紙で契約をする場合は、全員が印鑑を押し終わったものが原本で宅建業者さんが保管していると思います。
電子契約では、原本は宅建士が署名をして改ざん防止措置が施された重説のPDFファイルを原本かつ、その原本をダウンロードできるようにしておくことが求められます。
ー取引が完了したものだけではダメということですか・・・?
普家さん:そうなんです。厳密には取引が終わった状態で、以下の2つを「ダウンロードできる状態」にしておく必要があります。
- 宅建士が署名をして改ざん防止措置が施された重説のPDFファイルを原本として保管
- 宅建士が署名をして改ざん防止措置が施された重説のPDFファイルを原本としてダウンロードできるようにしておく
ーなるほど、これは難しいですね。
普家さん:はい。こうした細かい守るべきルールが他にもありますので、内容によっては宅建業法違反に問われるものもあります。
例えば、通常は35条書面を終えて37条書面を締結しますが、電子契約ではタイムスタンプという形で押印した時間が記録されるので、ヒューマンエラーで37条書面を先に押印してしまうと業法違反になってしまいます。
従業員のオペレーションに一任するのはリスクが大きいので、PICKのサービスであれば適法と国土交通大臣から回答を得ていますので、安心して使っていただけます。
本制度についてさらに詳しく知りたい方は、株式会社PICKさんへお問合せください。
不動産業界のDXの未来は?電子契約は今後どうなっていくのか
ーこれから先、電子契約の広がりはどうなっていくのでしょうか?
普家さん:今後4〜5年で電子契約は加速度的に広がっていくと思います。
新しいサービスの広がりは時間もかかりますが、飯田グループホールディングスさんのような大手企業が、実際の取引で使うことで地場の不動産会社やエンドユーザーにも広がってきます。
後は独断の予測ですが、2028年に不動産売買業で使用する会社が全体の27〜30%の割合になるのではないかと計算しています。外れたら笑ってください(笑)
ー楽しみにしています!電子契約を利用している会社は東京の会社に集中しているのでしょうか?
普家さん:東京が全体の3〜4割で、地方の会社さんが意外と使ってくれていますね。
地方は移動距離が長くなるので、郵送物やハンコなども片道1時間かけてもらいに行く負担が軽減されます。また、リゾート地が絡むところも多く、例えば沖縄や那須などの物件を東京のかたが買う場合に、現地の不動産会社と電子契約でやりとりをするケースも増えていますね。
先日も種子島に行ったのですが、電子契約を検討しているという不動産会社にも出会い驚きました笑。東京一極集中でもないなと。
ー驚きですね!最後に不動産業界では事業の承継問題、地方の過疎化など様々な課題がありますが、PICKさんならではの想いを聞かせてください。
普家さん:PICK FORMを作った背景には、地方の高齢な社長さんに使ってもらいたいという想いがあります。
PICKは大分県が創業地ですが、地方は人がいないにも関わらず事務処理が増え、採用も大変な環境です。大分県と東京都で、1件の成約単価で仕事量は変わらないものの仲介手数料も大きく違います。
そんな状況でこそDXが必要です。そこでDXに取り組んでおけば採用の力もつき、人も増えて経営も成り立つロジックになります。地方でも若い人が働きやすくなると思っています。
事業を存続させるためにツールを使ってもらう。この価値観を広げていきたいですね。私たちも仲良くなって心理的ハードルが下がったタイミングで想いを伝えるようにしています。
ゴルフや釣り、お酒を飲んで仲良くなるというのも大切にしていきたいですね。
編集後記
今回は、不動産電子契約サービスPICKFORMを運営する、株式会社PICK代表の普家さんにお話を伺いました。
以前はTwitterのスペースで営業に関する話題をお話しいただいたこともあり、PICKさんの勢いや想いに共感して密かにフォローさせていただいていました。
不動産DXに取り組みたい。でも何をすれば良いかわらかない。
こう思っている会社は多いものの、導入がうまく行かないのは、過去に失敗した経験があったり、導入前後の社内調整で止まってしまったり。往々にしてあるのではないかと思います。
実際にコミュニティに参加することで価値が生まれたりと、今後のPICKさんの勢いにも目が離せません。
私も不動産業界に身を置く一人として、業界に良い変化を起こそうと大きな刺激をいただきました。
そして、関西支社の出店もお待ちしております!笑
PICKさんへのお問い合わせはこちら→株式会社PICK