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一括査定の未来と不動産集客のあり方を考える

こんにちは、不動産のOTOMO(@zebrakun24)です。

近頃、色んなサービスが生まれすぎて、不動産DXという言葉が一人歩きしているような感覚があります。

IT化や効率化は大事なのですが、不動産の現場にいる私ですら整理が追いついていません笑。

不動産の現場で働く一人として「一括査定サイト」のあり方、不動産集客のあり方を整理してみました。

私の結論はいつも「集客を丸投げせずに、自分たちでも仕組みを作ろう」ということです。

現場でも、過去10社以上の査定サイト運用経験や、サービス運営会社の役員の方ともお話しさせていただりしますので、少しでもご参考になれば嬉しいです。

一括査定サイトとはなにか

言わずもがな、一括査定サイトは「不動産会社と不動産の売主さんをマッチング」するサービスです。

不動産を売りたい!というユーザーと、不動産を仕入れたい(預かりたい)!という不動産会社の架け橋となるサービスです。

図にしてみました。

不動産だけではなく、建築リフォーム・車や金融商品、様々な業種で展開されているモデルです。

私が知りうる限りでも、10社以上のサービスがあります。

中でも、一括査定でトップシェアを誇るイエウールと言うサービスがあります。

運営会社の株式会社Speeeさんは上場しており、決算資料の中では市場について、中古売買市場は16.9兆円の巨大な市場と述べています。

マーケットは非常に大きいので、各社がこぞって参入しています。

出典:株式会社Speee決算資料

ちなみに、平成30年の不動産業界の売上高は46兆5千億円、経常利益は約5兆3千億円です。

市場について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

【業界の今後】国交省不動産業ビジョン2030をわかりやすく解説

一括査定サイトの仕組みとビジネスモデル

業界の中でも、有名なサービスをあげると以下のようなものがあります。

IT会社が母体となっているサービスで主要なものを挙げてみます。(敬称略)

サービス名運営会社
イエウール株式会社Speee
リビンマッチリビン・テクノロジーズ株式会社
HOME4U株式会社NTTデータスマートソーシング
イエイセカイエ株式会社
おうちクラベルSREホールディングス株式会社
マンションナビマンションリサーチ株式会社

大手ポータルSUUMOやHOMES、アットホームさんもやってます。

おうちクラベルは「(旧)おうちダイレクト」というサービスでしたが、最近変わりました。

Speeeさんはイエウールの他にも、すまいステップイエウール土地活用おうちの語り部、といったサービスも運営しています。

初見の方は、すでに混乱されているかと思います。

ユーザーは「どこのサービスに問い合わせているのかわかっていないケース」もあります。

私もたまに混乱します。笑

査定サイトの収益はどう上がるのか

査定サイト運営会社の収益は「不動産会社への送客数」で決まります。

送客すればするほど売上が上がり、大体1件数万円の成果報酬型です。

そのために大量の広告をかけてユーザーを集め、不動産会社に送客します。

では、冷やかしの反響がきたら?

「課金除外制度」があります。

不動産会社が「この反響はだめ」と判断すると、除外「申請」を出すことができます。

申請が通れば、課金されないわけですが、この課金除外の審査基準は運営会社のスタンスがかなり色濃く反映されます。

商売ですから、なんでもかんでも除外できないと思いますが、よくできた仕組みです。

また、送客を受けた方の不動産会社は、他社と競争して媒介(買取)を獲得するため、競争モードに入ります。

不動産が世に出るまでの流れ

不動産営業マンのミッションは、専任媒介の獲得なので、他社より優れたポイントを打ち出してPRします。

一括査定をしたら、複数の会社が一斉に電話しますので売主さんもどこがどこだっけ?となります。

引っ越しの一括見積もりとかでもそうですよね。

不動産売却は査定価格がとても重要な要素で、売主さんは高い価格を出してくれた会社に依頼することが多いです。

よくあるケースを図にしました。

業界では、これを高値預かりと呼びますが、結果売れずにどんどん値段を下げていくケースもあります。

売主さんは、高く査定してくれる会社に好意を持つものです。

流通価格は分からないので、そのために一括査定で見比べたいのです。

実際、それで売れるケースもありますし、売れないケースもあります。

不動産会社が運営する一括査定サイトもある

一方「大手6社が共同して運営している一括査定サイト」もあります。

サービス名ブランド
すまいValue三井のリハウス
小田急不動産
東急リバブル
三菱地所ハウスネット
住友不動産販売
野村の仲介+
各社ブランド名で表記

なお、大手不動産販売会社は、これだけではなく自前でCM、リスティング、ランディングページ、SNS広告などを使って集客を行なっています。

査定サイトは既に乱立しており超レッドオーシャンであることと、大手がすでに独占していることが分かります。

不動産各社は、いかに売主さんにアプローチできるかが生命線ですが、問題は小さい不動産会社や個人が、ここにどうやって勝てますか?加盟する方がいいのですか?という点です。

これらを踏まえて、査定サイトの変遷を追っていきましょう。

一括査定サイトと不動産会社のそれぞれの主張

一括査定サイトの賛否両論はありますが、世の中に求められないサービスでなければ生き残れません。

査定サイトが世に出た時には、画期的だ!と言う声もありましたが、今は増えすぎた印象です。

別の商品もそうです。スマホとかも出た時はすごい!と言われますが、今は当たり前にみんな持っていますよね。

新しいサービスは大体以下の変遷を辿ります。

  1. 新しいサービスが生まれる
  2. 追随するサービスが生まれる
  3. パイの奪い合いになる
  4. 価格競争 or 差別化をする
  5. 他にも新しいサービスがどんどん出てきて不動産DXが流行っている(イマココ)

このスパイラルになると、どうなるか?

各サービスは、売上を立てるためには少々過激な広告で目を引く or 問い合わせをしてもらうハードルを下げる必要があります。(全てのサービスがそうではないですが)

現場で起きた一例をご紹介します。

実際に起きた私のエピソード

例えば、ボロボロの空き家がとても高く売れる?!というちょっと過激な広告を見た売主さんがいたとします。

売主さんは広告をクリックして、一括査定に申し込みます。

すると、こちらに送客されますので、こちらから売主さんに連絡をします。

実際に訪問査定をして、査定価格を出します。

しかし、この物件は私道、共有持分、心理的瑕疵ありの物件で、中々ご提案が難しいものでした。

するとどうなったでしょう?

空き家高く売れるって聞いたけど、全然値段つかないんだね!

と怒られました。

売主さんは、全く分からないですから、高く売れると思っているわけです。

あくまで一例ですが、強く印象に残っているエピソードです。

送客の質が下がってくると、不動産営業マンの不満が募ってきてしまいます。

査定サイト側の主張

次に、査定サイトの視点で物事を考えてみましょう。

査定サイト側の言い分としては「今すぐ売りたいお客さんではないから何度も追客が必要」と言います。

「きちんと追客しないと結果は出ない」

「結果が出ているところは、即対応しています」

お客さんには、「今すぐ客」「まだまだ客」がいまして、このまだまだ客を査定サイトは集客しているのです。

すぐに売りたい方は、看板・チラシ・直接来店されることが多いですよね。

まだまだ客は時間がかかるので、長期にコミュニケーションを取る必要がある。

これはごもっともの内容です。

不動産会社側の主張

一方、不動産会社の言い分としては、これを送客として課金するのはどうなの?と言います。

「全然売る気ないじゃん」

「そんな何ヶ月も追客できないし、、」

不動産営業マンは今月の数字に追われているのです。

「売る気はないけど価格を知りたいだけの人」もやはり一定数いて、スピードを求める社長や営業マンにとっては、優先順位が落ちてしまいます。

ネットに慣れていないほど。

そして、売主さんからしても、どの不動産会社が良いかよー分からんとなるので、とりあえずは感じが良さそうで、価格が高い会社にお願いしよう、となるのが現状です。

査定サイトはこの先どうなるのか

上記のお話は、査定サイトを否定するわけでも、不動産会社を否定しているわけでもありません。

この先の未来、さらに一括査定サイト間での競争は激化していき、本当に求められていくサービスのみ残ると思います。

これは一括査定サイトに限った話でもないです。

「脱ポータル」も「紙の電子化」も必然の流れ。

時代を読み、自分たちに必要かどうかを見極める必要性も出てきます。

時代に合わせて変化できたもののみが生き残るということです。

これからの不動産集客のあり方

不動産会社はITに強くない、という前提があるのかもしれません。

私のボスも60代ですし、FAXやハンコ、ホワイトボード文化も色濃く残ります。

他からはなんてアナログなんだと思われています。

なので、10年前のサテライト量産型SEO手法の提案や、月々1万円でホームページできますよ!(地獄のリース)モデルの営業がきます。

丁重にお断りします。

不動産会社は、ITをうまく使いこなしていて、このような提案や集客の方法を選別していく必要があります。

例えば、SNSでもパノラマのようなツールでも、さらに査定サイトでも、うまく活用しているところは、集客できているわけです。

なぜ効果が出ないの?

自分たちの強みは何なの?

すぐに答えは出ませんが、考え続けるのが大切です。

依存せず、仕組みを作る

きちんとそのサービスの理解に努め、不要なものは削減し必要なものは残す。

他のサービスに依存してはいけません。

集客と向き合って得られる「定量的な」結果は、以下の2つかなと考えています。

  1. 自社集客を強化することで、広告獲得単価の大幅な改善につながる
  2. 広告費が適正になることで、経常利益率が改善する

要は、冒頭の結論になりますが「集客を丸投げせずに、自分たちでも仕組みを作ろう」と言うことです。

それがひいては、売主さんの選択肢を増やすことにもつながるのではないかと思います。

ネット集客は楽をするものではない。汗をかいてコンテンツを作ろう

最後に、私は以前夫婦で、保険に入ろうとして「とある保険の比較サービス」を使ったことがあります。

厳選した大手優良企業のサービスを一括して比較できるのですが、結果として私が入ったのは、知人の保険営業マンから。

なぜか?自分に役立つ情報をくれたから

その一括サービスでは、自分たちが求めている機能にたくさんのオプションがつけられ、完全に予算オーバーしていました。

事前にYoutubeやブログで知識をつけ、その知人に聞いていて、気をつけてと言われていたから気づけたのです。

業界にいるから当たり前のことは、業界にいない人には分かりません。

不動産売却についても、投資家でもない限り、ほとんどの人が初めてで分からないものです。

昔は、分からないから不動産コワイみたいな感じだったのかもしれません。

しかし今はYoutube、ブログ、インスタ、Tiktokを通じて知識を得られます。

そんな方に、売却比較と言う選択肢を提案できる、一括査定サイトも素晴らしいものと思います。

一方もっと困っている人に向けた「役に立つコンテンツ」を発信することが、個人でも大手に勝てる戦略かなと改めて思います。

困っている誰かに見つけてもらえるように。

改めて引き締めてやっていきます。

長文お読みいただきありがとうございました。

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なお、事業者目線でみたAI査定について、記事を追加しました。

より理解を深めたい方はこちらも合わせてご参考ください。

【徹底解説】不動産のAI査定の仕組みとは?主要サービスをもとに解説

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